こんにちは。今週も先週に引き続き運行供用者責任について説明したいと思います。

 前回は、自動車損害賠償責任保障法(以下、「自賠責法」といいます。)3条の「自己のために自動車を運行の用に供する者」(以下、「運行供用者」といいます。)にどのような者が当たるかという点については多くの議論があると説明しました。
 (前回の記事はこちら:運行供用者責任について(1)

 そこで、今回は、運行供用者について詳しく説明したいと思います。

 運行供用者について、判例は以下のように定義しています(但し、「運行」ではなく「使用」という言葉を用いています)。

「自賠法3条にいう「自己のために自動車を運行の用に供する者」とは、自動車の使用についての支配権を有し、かつ、その使用により享受する利益が自己に帰属する者を意味する」(最判昭和43年9月24日裁判集民事92号369頁)。

 上記の定義は、自動車の使用についての支配権(運行支配)とその使用により享受する利益(運行利益)の2つの視点を運行供用者のメルクマールとして用いていることから二元説と呼ばれています。

 参考までにご紹介しますと、上記引用判例は、父親から自動車を借り受けて自己の営業に常時使用していた息子が惹起した交通事故について、父親は「自動車の運行自体について直接の支配力を及ぼしえない関係にあった」として、運行供用者にあたらないと判断しています。

 二元説に対し、運行供用者のメルクマールとしては「運行支配」のみを用い、「運行利益」は運行支配という事実を証明する材料としてとらえる一元説という考え方がありますが、二元説をとる判例も、運行支配を中心に運行供用者該当性を判断しているので、結論に大きな差はありません。

 判例は上で述べた二元説の立場から、運行支配と運行利益の帰属の有無で運行供用者の該当性を判断するのが一般ですが、それ以外の観点から判断を行う判例も存在します。

  最高裁判例の中には、運行支配・運行利益という中間概念を用いず、「自動車の運行を事実上支配、管理することができ、社会通念上その運行が社会に害悪をもたらさないよう監視、監督すべき立場」にある者を運行供用者としたもの(最判昭和50年11月28日民集29巻10号1818号)や、無断運転のケースで、自動車の所有者と無断運転者の関係、日常の自動車の運転及び管理状況などから客観的外形的に自動車所有者等のためにする運行と認められるときは、自動車運転者は運行供用者にあたるとしたもの(最判昭和39年2月11日民集18巻2号315頁)、同じく無断運転のケースで、無断運転者の運転が自動車の所有者の容認の範囲内にあったと認められる場合に客観的外形的に見て、自動車所有者は運行供用者にあたるとしたもの(最判平成20年9月12日裁判集民228号639頁)などがあります。

 次回は、具体的ケースにおいて、判例がどのように運行供用者の該当性を判断しているかについてご説明したいと思います。