今回は、交通事故によるけがでとても多い症状である「むち打ち症」における、自賠責後遺障害の認定についてとりあげてみます。
「自動車損害賠償責任保険の保険金等及び自動車損害賠償責任共済の共済等の支払い基準」によれば、後遺障害の等級の認定については原則として労働者災害補償保険における障害の等級認定の基準に準じて行うとされています。
そして、労災障害等級認定基準によれば、第12級は「通常の労務には服することはでき、職種制限も認められないが時には労務に支障が生じる場合があるもの」とされています。
12級と14級の相違についてみれば、第12級10号については、「局部に頑固な神経症状を残すもの」とされ、第14級12号については、局部に神経症状を残すもの」で、「第12級よりも軽度のもの」が該当するとされています。
実務上は第12級、第14級、非該当の差異は、それほど単純ではなく種々の観点から総合的判断されざるを得ません。
12級の後遺障害に該当すると認められるためには、他覚的所見を必要とするのが多くの裁判例です。このため、自覚症状について医学的に証明ができれば12級が認められ(「これは必ずしも画像所見による証明である必要はない」大阪地裁平成10年5月26日判決)、自覚症状につき医学的に説明ができれば第14級(横浜地裁平成6ね5月26日判決)、医学的に説明ができなければたとえ自覚症状があっても非該当ということになるでしょう。
後遺症等級認定において、画像所見による証明がない場合に、神経学的検査による異常所見があることがとても重要になってきます。
神経学的検査には、頸椎捻挫の場合、知覚検査、腱反射等の検査の他、スパーリングテストやジャクソンテスト、握力、徒手筋力テスト、筋萎縮検査等の検査があります。腰椎捻挫の場合には、腱反射、知覚検査、筋萎縮検査の他、ラセーグテスト、SLRテスト、FNSテスト、徒手筋力テスト、バレーサインの検査等があります。
これらの検査は、どんな病院でも可能なわけではないため、検査を受けるための病院を探すことも重要になってきます。
いずれにしても、12級と14級の認定基準に明確な差異がない為、いずれの認定がされるかの事前判断は容易ではありません。14級との認定結果に「異議申し立て」をして12級が認められる場合があるのもそのためです。