1 運行供用者責任

 自動車損害賠償保障法第3条本文は、「自己のために自動車を運行の用に供する者は、その運行によって他人の生命又は身体を害したときは、これによって生じた損害を賠償する責に任ずる。」(運行供用者責任)と規定しています。

 ここでいう「自己のために自動車を運行の用に供する者」(運行供用者)とは、自動車の運行を支配して運行による利益を享受する者をいいます。すなわち、自動車を自ら運転して自動車を直接支配する者だけではなく、他人に自動車を運転させて他人の運転を介して自動車を間接的に支配する者も含まれています

2 具体例

(1)レンタカー会社

 レンタカーの利用者が交通事故を起こした場合、一般的には、レンタカー会社は運行供用者責任を負う場合があると考えられています(東京地判H19.7.5など)。

 しかし、常に人身事故についてレンタカー会社が運行供用者責任を負うというわけではありません。裁判例では、返還期限の経過の有無・程度や、レンタカー会社が利用者からレンタカーを回収するためにどのような手段を講じたか等の事情を考慮して、もはやレンタカー会社が車両の運行を指示,制御し得る立場を失っていたと考えるのが相当な場合には、レンタカー会社は「運行供用者」にあたらず、運行供用者責任を負わないとする傾向にあります。 例えば、名古屋地判H19.10.16は、返還時期が24日経過していたこと、レンタカー会社が警察に相談していたこと等を考慮し、レンタカー会社の運行供用者責任を否定しています。

(2)運転代行業者に代行を依頼した者

 運転代行の業者が交通事故を起こした場合には、一般的には、運転代行を頼んだ本人も事故の相手方に対して運行供用者責任を負う場合があります。

 もっとも、運転代行業者は、平成14年及び平成16年の道路交通法改正によって、都道府県公安委員会の認可を受けること、安全運転管理者を設置すること、料金を営業所に掲示し利用者に説明すること、保険に加入すること等が義務づけられるとともに、普通自動車第二種免許が必要とされるなど、タクシーと同様の法的規制が及びつつある状況です。そのため、今後は、タクシーの乗客がタクシー運転手の起こした事故について運行供用者責任を負わないとされているのと同様に、運転代行業者が起こした交通事故に関して、運転代行を頼んだ本人は運行供用者責任を負わないとされる可能性もあります。

弁護士 細田大貴