- 1 休業損害とは
- 2 給料をもらっていない主婦は休業損害をもらえない?
- 3 主婦業が出来なかった場合の1日の損害額は?
- 4 主婦は会社を休んでいるわけではないので休業日数はどう数える?
- 5 主婦の方もそれ以外の方も交通事故のご相談は弁護士へ
主婦の方が交通事故に遭って怪我をしてしまった場合、家事労働をすることができなくなってしまいます。家事労働ができなくなってしまった場合に、休業損害が認められるのでしょうか?
1 休業損害とは
そもそも休業損害とは、交通事故による怪我で仕事ができなくなり、怪我の治癒や症状固定までの間に働いていれば本来もらえたであろう収入が減少したことについての損害です。
会社で働いていれば、事故で仕事に出られなくなれば、その分収入が減少してしまいます。アルバイトやパートタイム労働でも同様です。基本的には、収入日額×休業した日数=休業損害額となります。
2 給料をもらっていない主婦は休業損害をもらえない?
これに対して主婦は、家族の生活のために家事や育児を行っているわけですが、会社やアルバイト先から、給料をもらっているわけではありません。
同じように交通事故に遭って怪我をして家事ができなくなった場合に、主婦は休業損害をもらえないのでしょうか?
昭和49年7月19日の判決で最高裁は以下のように述べました。
「結婚して家事に専念する妻は、その従事する家事労働によって現実に金銭収入を得ることはないが、家事労働に属する多くの労働は、労働社会において金銭的に評価されうるものであり、これを他人に依頼すれば当然相当の対価を支払わなければならないのであるから、妻は、自ら家事労働に従事することにより、財産上の利益を挙げているのである。一般に、妻がその家事労働につき現実に対価の支払を受けないのは、妻の家事労働が夫婦の相互扶助義務の履行の一環としてなされ、また、家庭内においては家族の労働に対して対価の授受が行われないという特殊な事情によるものというべきであるから、対価が支払われないことを理由として、妻の家事労働が財産上の利益を生じないということはできない。」
家事労働も、妻ではなく家事代行サービス業者に頼めば、費用が発生しますから、妻の家事労働にも財産上の利益があるということです。
主婦も交通事故の怪我で家事労働が出来なくなれば休業損害が認められるのです。
3 主婦業が出来なかった場合の1日の損害額は?
金額については、現実の収入が発生していませんから、基礎収入については弁護士が保険会社と交渉する際には過去の裁判例をもとにした基準として、賃金センサスを用いることが多いです。年度によって多少の誤差はありますが平成28年度の賃金センサスでは女性の全年齢平均賃金額は376万2300円になります。この金額を日割りで計算すると1日当たりの金額でおよそ1万308円になります。主婦業が一日できないと1万円程度の損害が生じていると考えることが出来るわけです。
仮に、主婦が仕事も行っており、収入があれば、現実に得た収入と女性の全年齢平均賃金額のいずれか高い方で算定することになります。
4 主婦は会社を休んでいるわけではないので休業日数はどう数える?
専業主婦は、会社を休んでいるわけではないのですが、自宅で家事ができなかった日数が休業した日数として計算されます。
入院した場合や、病院に行った場合には、家事労働をすることが出来なくなってしまうので入通院した日数が、休業日数であるとして計算する方法があります。
他の計算方法としては、事故から、治癒または症状固定までの期間全体を段階的に休業した割合を減少させていくという方法もあります。事故による怪我を負った日から、治癒もしくは症状が固定するまで、徐々に怪我が快方に向かうのですから、期間中は一貫してすべての家事労働が出来なくなるわけではないでしょう。そこで事故から治癒までに期間のうち、初めの三分の一の期間は100パーセントの休業と考え、次の三分の一を60パーセント、最後の三分の一を20パーセント、というように休業の割合を減少させながら、合計額を休業損害として計算することもあります。
弁護士が交渉する場合にはこのような計算方法の中から事案に即した計算を行い保険会社と交渉します。
5 主婦の方もそれ以外の方も交通事故のご相談は弁護士へ
以上のように会社勤めをしていない主婦であっても、家族のために家事労働に従事していれば休業損害が認められるのです。弁護士が保険会社と交渉する際に用いる上記の基準で計算すると、決して低くない損害額が認められることもあります。事案ごとに特殊な事情があれば、さらに損害額が増加する可能性もあります。
気になる点がございましたら、是非一度弁護士にご相談ください。