3 労災保険を使用するメリットがあるのはどのような場合か
(1) 被害者の過失が大きい場合
労災保険からの治療費の支給(療養補償給付)では、過失相殺がされません。自賠責保険では、被害者に重大な過失があった場合には過失相殺がされますので、被害者に過失がある場合、労災の利用には大きなメリットがあります。
(2) 一括対応打ち切りの場合
相手方保険会社が、一括対応を打ち切ってきた場合にも、労災を利用することが可能な場合があります。
(3) 後遺障害認定申請が見込まれる場合
労災保険でも、後遺障害の認定手続が行われます。労基署調査官が、後遺障害等級認定のために作成した「補償給付実地調査復命書」は、被害者の後遺障害の状況と認定内容が詳しく記載されていますが、これは、個人情報開示手続で取得することができます。
自賠責保険に対する後遺障害認定手続や訴訟の際に、この復命書を有利に用いることができるので、後遺障害認定申請が見込まれる事案では、労災利用に特にメリットがあります。
また、労災には、一定の重い障害に関し、継続して検査等が受けられるアフターケア制度もあります。
(4) 損益相殺されない費目がある
労災では、特別支給金も給付されますが、この支給金は、任意保険、自賠責保険に請求する際に控除されません(損益相殺の対象外)。そのため、自賠責保険のみを利用する場合に比べて、トータルで経済的に得になることがあります。
以上のように、労災保険の利用には色々なメリットがあります。通勤中の事故の場合で、労災を利用すべきか迷っている方は、ぜひご相談ください。