1 はじめに

 こんにちは、弁護士の辻です。

 このブログをご覧になられている皆様なら、一度は被害者請求・加害者請求などという単語を耳にされたことがあるのではないでしょうか。
 しかし、法的に、被害者請求・加害者請求とは何なのか、詳しくご存じの方は少ないと思います。そこで、今日は被害者請求・加害者請求の法的な特徴について、お話したいと思います。

2 被害者請求の特徴

 被害者請求とは、自動車損害賠償保障法(以下、「自賠法」といいます。)16条に基づいて、被害者が直接加害者の加入する自賠責保険に対して損害賠償額を支払うよう求めるものです。
 このような被害者による自賠責保険に対する直接請求は、自賠法がなかったとしたら行うことはできません。
 なぜかといいますと、自賠責保険は、加害者が加入する保険契約であるため、加害者の加入する保険契約の当事者ではない被害者が、保険会社に直接請求することは、本来はできないからです。

 しかし、皆様も感じられたかもしれませんが、それだと非常に迂遠です。
 また、仮に被害者が自賠責保険に直接請求することができず、加害者が賠償をした後でなければ自賠責保険を使うことができないとすると、加害者の資力に不安がある場合や、そもそも加害者に賠償する意思がない場合には、被害者が自賠責保険の限度内ですら賠償を受けることができなくなり、被害者保護にかけます。
 これは、自賠法が自動車事故の被害者の救済を目的とする制度であることから考えて不当と言わざるを得ません。
 そのため、自賠法は、被害者が、直接自賠責保険に請求できるという制度を採用したのです。

 このように、被害者から、加害者の自賠責保険に直接請求が可能となっていることが、被害者請求の法的な一番の特徴だと言えます。

3 加害者請求の特徴

 加害者請求とは、自賠責保険の被保険者である加害者本人が自賠責保険に対して保険金の支払いを求めるものです。
 自賠責保険は、加害者の加入する責任保険ですので、この被保険者たる加害者から保険金を請求する方法が、原則的な請求方法といえます。

 しかし、加害者請求の場合に、加害者が被害者に賠償金を支払う以前であっても自賠責保険金の支払いを受けることができるとすると、保険金を受け取った加害者が、それを被害者に支払う保証が存在しないことや、被害者請求をしても、既に加害者に支払われてしまっているため、被害者が自賠責保険からも一切賠償を得ることができなくなってしまうことから、不当です。
 そのため、加害者請求では、「自己が支払いをした限度においてのみ」保険金の支払いを請求することができるとされています。
 この点が、加害者請求の法的な一番の特徴だと言えます。

4 さいごに

 自賠法は、被害者保護のための法律ですので、通常の保険とは異なった制度を採用しています。
 ただ、どうしても複雑であったり、わかりづらい部分がありますので、被害者請求をしたいが不明な点がある場合などは、どうぞお気軽に当事務所にご相談ください。