1 労災とは
「労災」とは、業務上の事由又は通勤による労働者の負傷、疾病、障害、死亡等をいいます(労働者災害補償保険法第1条参照)。
交通事故が、業務中又は通勤・退勤中に起こった場合、「業務災害」(労働者災害補償保険法第7条第1項第1号)、「通勤災害」(同第2号)の要件を満たせば、労災保険も使用することができます。
2 労災保険と自賠責保険どちらを使用すればいいのか、会社が労災利用を渋ったらどうすればいいのか
(1)
交通事故により労災保険の利用をしようとすると、労基署の窓口で、「自賠責保険をまず使ってください」と言われることがあります。これは、厚生労働省の通達(昭41・12・16基発1305号)に、自賠責保険による給付を先行させる旨の規定があるためです。
もっとも、このような通達には、国民に対する拘束力があるわけではありませんので、交通事故被害者は、労災保険の利用と自賠責保険の利用(通常は相手方保険会社による一括対応)のいずれかを選択して利用することができます。
(2)
また、弁護士としての経験上、「勤務先が労災を使うことを嫌がる」という話を少なからず聞きます。
これは、「労災を使うと労基署が調査に入るのでは」「労基署から何か処分を受けるのでは」との不安に基づくものです。しかし、特に通勤中に交通事故に遭ったような場合(通勤災害) には、労災事故発生に関し事業主に安全配慮義務等の落ち度があるわけではないため、交通事故に関し労災保険を使用したからといって、直ちに、事業主に何らかの処分が課せられるわけではありません。
そのため、私は、事業主にこれらを説明し、労災申請への協力を粘り強くお願いすることにしています。なお、事業主がどうしても労災申請に協力しない場合には、事業主が労災の証明を拒否したことに関する証明書を添えて、被害者自身で労災申請をしていただくことになります。