3 駐車場の標識等に違反した加害者の過失割合

 一般に、交通事故の加害者と被害者それぞれに過失があった場合には、それぞれの過失の程度の割合に応じて、加害者の損害賠償責任の範囲が定まることになります。
 これを「過失相殺」といいます。

 たとえば、道路交通法の適用がある駐車場では、通常の道路と同様、運転者はその標識等に従う義務がありますので、標識等に違反して道路を逆走して交通事故を起こしてしまった加害者は、この「交通違反」の点が「過失」として考慮されて、過失相殺の局面で不利に扱われることになります。

 そして、標識等に違反したことが過失として考慮されることは、道路交通法の適用がない駐車場であった場合でも基本的には同じです。  その理由は次のとおりです。

 道路交通法の適用がない駐車場であっても、そこにある標識等は、通常、その駐車場を利用する人や車両の安全を図るために設けられています。また、その駐車場を利用する人や車両にとっても、標識等に注意して通行することが期待されています。
 さらに、通常、その駐車場を利用する者は、他の利用者も標識等を遵守して通路を通行することを期待しているはずです。

 そうであるならば、そのような利用者全体の期待を裏切って標識等に違反した運転者には、「過失」があるものとみて、重い責任を負わせることが相当であると考えられているのです。

 例えば、「駐車場内の通路の交差部分で対向車と衝突してしまったケース」を想定すると、一般的には、お互いの過失割合は5割:5割であるとされています。

 ただし、このケースで加害者が標識に違反し逆走していた場合、道路交通法の適用のある駐車場ではもちろん、仮に道路交通法の適用がないと評価できる駐車場でも、この「逆走」の点が考慮されて、加害者側の責任が1.5割~2割程度加重されるのが一般的です。
 そうすると、加害者と被害者の過失割合は7割:3割となる可能性があり、被害者に有利な過失割合になり得ます。

 このように、駐車場の標識等に違反して逆走した場合、加害者は過失割合において不利に扱われやすくなります。

4 さいごに

 過失相殺は他にもさまざまな要素を考慮して総合的に判断されます。
 専門的な判断が求められるところである上、賠償額にも影響してくるので、気になる方はぜひ弁護士にご相談ください。