1.はじめに

 皆様、こんにちは。
 今日は、皆様が一度は耳にされたことのありそうな人身傷害(補償)保険について取り上げたいと思います。

 車に乗られている方であれば、自賠責保険だけでなく、任意保険にも加入されていると思いますが、その場合、ご自身の加入した任意保険に人身傷害(補償)保険が付いているかもしれません。
 対人賠償保険とはどう違うのか、いわゆる傷害保険とどう違うのかなどを見ていきましょう。

2.対人賠償保険と人身傷害(補償)保険との違いは?

 対人賠償保険は、他人、つまり相手方(被害者)のための保険です。例えば、車に乗っていて歩行者をはねて、その被害者の方の治療費等を保険によって賠償するという場合を想定していただければお分かりいただけると思います。

 しかし、実際には、車対歩行者だけでなく、車対車の事故も多く起こります。例えば、車対車の事故の場合、相手方車両の運転者がケガをするだけでなく、運転していたご自身もケガすることがあります。この場合、対人賠償保険が付いていると、相手方車両の運転者の治療費等が保険によって賠償されることになりますが、ご自身のケガの治療費等まで賄われるものではありません(もちろん、相手方車両の対人賠償保険によってご自身の治療費等が賠償される場合もありますが、過失割合によっては、慰謝料等十分な賠償金を受け取れられないこともあります。)。

 これに対して、人身傷害(補償)保険は、ご自身のための保険として位置づけられます。人身傷害(補償)保険が付いていると、基本的には、ご自身のケガの治療費等がご自身の保険によって支払われることになります。また、運転者自身の過失に関わりなく(仮に、被害者よりも過失割合が大きく、加害者という立場であっても)、支払われるということも大きなポイントです。

3.傷害保険と人身傷害(補償)保険との違いは?

 傷害保険は、ご自身がケガをした場合に保険金を支払ってもらう保険であるので、人身傷害(補償)保険と共通点がありそうです。  ただし、傷害保険については、通常、ご自身の収入等に関わらず、入院1日あたり何万円、通院1日あたり何千円などと、入通院日数に応じて定額の保険金が下りてくる定額保険です。例えば、転んで1週間入院した場合には、入院一日あたり何万円×7日という形で保険金が算定されます。

 このような傷害保険では、入院すればするほど、通院すればするほど保険金がもらえるというわかりやすい仕組みではありますが、しかし、逆に、不要な治療、通院をして保険金をもらおうとする人がいるのではないかという心配も出てきそうです。

 そのため、保険会社は、定額の保険ではなく、実損填補型保険として人身傷害(補償)保険というものを設けました。実損填補型保険というのは、現実に損害があった場合にだけ保険金を支払うという保険で、治療費(どの病院に行き、治療費としていくらかかったなどを見ます。)や休業損害(休業損害証明書などを提出させて損害があったことを示させます。)の発生、金額などを確認し、基本的に実際に生じた損害をベースに保険金支払いなどで対応するというものです。

4.最後に

 今回は、人身傷害(補償)保険についてどういうものか取り上げました。基本的には、相手方の損害を賄う対人賠償保険との違い、傷害保険のような定額保険ではない実損填補型保険ということを念頭に置いていただければ十分だと思います。
 ただし、人身傷害(補償)保険を使うべきかどうかなどは慎重な判断が必要な場合もありますので、そのような場合には一度弁護士に相談してみるとよいでしょう。