大阪市在住のXさんが、神戸市で車を運転している際に奈良市在住のYさんの車に追突されて怪我をしました。このケースにおいて、XさんがYさんに対して損害賠償請求訴訟を提起する場合、どの裁判所で裁判が行われることになるでしょうか(なお、請求額は140万円を超えるものとします)。

 ある事件についていずれの裁判所が裁判権を行使できるのかに関する定めを管轄といいますが、交通事故のような民事訴訟の管轄については、民事訴訟法(以下「民訴法」といいます。)に規定されています。

1.被告の住所地

 まず、民訴法4条1項に「訴えは、被告の普通裁判籍の所在地を管轄する裁判所の管轄に属する」という規定があり、同条2項に「人の普通裁判籍は、住所により・・・定まる」との規定がありますので、上記のケースではYさんの居住地である奈良市を管轄する奈良地方裁判所は、管轄を有するということになります。

2.義務履行地

 また、損害賠償請求は「財産権上の訴え」にあたりますので、民訴法5条1号により、「義務履行地」を管轄する裁判所に訴訟を提起することが可能です。

 そして、民法484条は、特定物の引渡し以外の債務については、「債権者の現在の住所」において弁済をする必要があると規定していますので(持参債務といいます。)、上記のケースでは、債権者すなわちXさんの居住地である大阪市を管轄する大阪地方裁判所も管轄を有することになります。

3.不法行為地

 さらに、交通事故の損害賠償請求訴訟は、「不法行為に関する訴え」にあたりますので、民訴法5条9号により「不法行為があった地」を管轄する裁判所に訴訟を提起することができます。

 したがって、上記のケースでは、交通事故が発生した神戸市を管轄する神戸地方裁判所も管轄を有するということになります。