1.はじめに
こんにちは、弁護士の辻です。
家族や友達が運転している車に乗っているとき、単独事故を起こされたり、こちら側の運転手に過失が大きい事故を起こされて怪我をすることがあります。
この時、同乗していた人が、運行供用者や運転者に損害賠償請求をするとき、好意同乗減額が主張されることがあります。
本日は、この好意同乗とは、どういう意味なのか、どういう場合に減額されるのかについて、ご説明します。
2.好意同乗減額
(1)好意同乗減額とは
好意同乗とは、一般に無償によりもしくは好意で他人を自動車に同乗させることをいいます。
そして好意同乗減額とは、この際に事故が発生した場合、同乗者から運行供用者や運転者に対する損害賠償請求を減額することを言います。
なぜ、減額が主張されるかといえば、好意同乗については、対価も払わず自動車に同乗させてもらう利益を得ながら、全くの第三者に対する請求と同じ賠償を求めるのは衡平を欠くという価値観が、かつて存在したからです。
これについては、時代が変わり、他人を同乗させて自動車を運転することが常態化した今日においては、単に無償で同乗した事実だけで損害賠償額を減額することは出来ないと言われるようになりました。
そのため、現在では、好意同乗の事実だけで損害賠償額を減額することはできないと一般に言われています。
(2)同乗者自身にも事故に対して責任が認められれば減額がありうる。
もっとも、好意同乗者が運行をある程度支配したり、危険な運転状態を容認又は危険な運転を助長したりした場合には、信義則、公平の原則または過失相殺の法理の類推適用等によって、損害賠償額が一定程度減額されたり、慰謝料を減らされるということがあります。
(3)具体的にどの程度の減額があり得るのか。
事故発生の危険性が高いような客観的事情が存在することを知りながら、あえて同乗したと認められる場合、他にどのような事情があるかにもよりますが、大体5%から20%の範囲で減額があり得ると言われます。
また、単に、事故発生の危険性が高いような客観的事情が存在することを知りながら、あえて同乗した場合を超えて、同乗者自身が事故発生の危険性を増大させるような言動をしていたと認められる場合には、他にどのような事情があるかにもよりますが、大体10%から50%の範囲で減額があり得ると言われます。
3.おわりに
以上に見たように、減額される程度には、かなりの幅があり、具体的な事案によるといわざるを得ない部分が多々あります。
そのため、好意同乗による減額が問題となった場合には、弁護士などの専門家に相談することをお勧めします。