1.はじめに

 こんにちは、弁護士の辻です。
 被害者の方が、加害者の刑事裁判に参加することができる被害者参加制度という制度があります。これは、平成20年に施行された制度で、一定の事件の被害者やご遺族等の方々が、刑事裁判に参加して、公判期日に出席したり、被告人質問などを行うことができます。
 この被害者参加制度の対象となる一定の事件の中には、交通事故事件も含まれています(刑訴法316条の33第4号)。そこで、今日は、この被害者参加制度の概要についてお話したいと思います。

2.刑事裁判への被害者参加

(1)刑事裁判における被害者の立場

 そもそも刑事裁判とは、罪を犯した疑いのある人(被疑者)を検察官が起訴することによって始まるもので、裁判所が、起訴状に書かれた事実が本当にあったかどうかをいろいろな証拠に基づいて判断し、被告人を有罪とするかどうか、有罪と認めた場合どの程度の刑罰を科すかを決めるものです。
 つまり、被害者は、刑事裁判では当事者ではないのです。
 したがって、刑事裁判において、被害者の方は証人尋問の対象となる程度で、当事者的な立場は与えられていません。

(2)被害者参加制度の導入

 しかし、被害者やご遺族等の方が「事件の当事者」として、自ら被害を受けた事件の裁判のいきさつや結果を見守りたい、またはその裁判に適切に関わりたいという思いは、十分に尊重されるべきものであると従来から言われてきました。
 そこで、犯罪被害者の方々に「事件の当事者」としてふさわしい手続上の地位及び権限を保障するため、平成20年12月1日から、被害者参加制度が施行されました。
 被害者参加制度が導入された結果、前記した通り、裁判所から参加が許可された被害者やご遺族の方々は、刑事裁判に参加して、公判期日に出席したり、被告人質問などを行うことができるようになりました。

(3)被害者参加の具体的な利用方法

ア 誰に申し出ればよいのか

 被害者参加制度を利用するには、被害者やご遺族等の方が、あらかじめ検察官に対し、被告事件への参加を申し出る必要があります(刑訴法316条の33第1項・2項前段)。
 そのため、実際に被害者参加制度の利用を考えられている方は、ご自身等が被害に遭われた事件を担当している検察官の方にあらかじめ連絡しておく必要があります。

イ 何時申し出ればよいのか

 被害者やご遺族の方が参加しようとするのは、「被告事件の手続き」(刑訴法316条の33参照)ですので、必然的に加害者が起訴された後になります。

ウ 申し出れば必ず参加できるのか。

  裁判所が許可した場合に、被害者の方は被害者参加をすることができます。
 具体的な許可手続きの流れとしては、被害者の方から、参加を申し出られた検察官が、意見を付して、裁判所に通知します(刑訴法316条の33第2項後段)。
 その通知を受けた裁判所は、被告人または弁護人の意見を聴き、犯罪の性質・被告人との関係・その他の事情を考慮し、相当と認めるときは、決定で当該被害者等の参加を許可する(刑訴法316条の33第1項)ことになっています。
 なお、仮に裁判所から不許可とされた場合、不服を申し立てることはできません。

3.おわりに

 交通事故の被害に遭われた方、特に重篤な後遺障害が残ってしまった方や、亡くなられた被害者のご遺族の方々は、損害賠償請求(民事)のみならず、加害者がどのような罪となるか(刑事)にも重大な関心があると考えます。
 そのため、被害者の方々は被害者参加制度の利用を考えてみるのも一つの方法だと思います。

 もし、ご自身では参加の方法が良く分からなかったり、不安を感じられる場合は、弁護士に相談されるのが良いでしょう。もちろん、弊所にご相談いただければ、誠実に対応させていただきます。