1 はじめに
こんにちは、弁護士の辻です。
自転車事故は、年々減少を続けており、平成17年と平成26年を比較すると、約7万5000件(40.6%)減少しています。しかし、対歩行者事故の減少率は2.5%、自転車相互事故では29.1%と自転車事故全体に比べて減少率が低く、自転車が加害者となりやすい事故はあまり減っていません(ITARDA INFORMATION交通事故分析レポートNo.112 公益財団法人交通事故総合分析センター参照)。
では、自転車事故で加害者となってしまった時、どの程度の損害賠償責任を負うのでしょうか。
今日は、自転車事故の加害者が民事上負う責任について、簡単にご説明したいと思います。
2 自転車事故の加害者も損害賠償責任を負うことがあります。
自転車事故であっても、故意または過失によって他人に怪我を負わせた又は他人の物を壊した場合、自動車事故の場合と特に変わることなく、損害賠償責任を負います(民法709条など)。もっとも、自賠法3条の損害賠償責任は、自転車の事故には適用がありませんので、その意味(運行供用者への請求ができないという意味)で、損害賠償請求ができる範囲は狭いとはいえます。
そして、どの程度の責任を負うかですが、自動車であろうと自転車であろうと、与えた損害が変わらなければ、責任を負うべき損害に差はないと考えられます。
そのため、自転車による事故であっても、被害者が怪我をした場合には、自動車と同じ様に高額の損害賠償責任を負うことがあります。
実際の裁判でも、自転車で歩道を走行中、自転車のハンドルが歩行者のショルダーバックの肩紐に引っ掛かり、歩行者が転倒し、大腿骨骨頚部を骨折した事案について、既払金と併せて約1700万の賠償責任を自転車運転手に認めたもの(実際には自転車を運転していたのが未成年者であったので、その両親に対する損害賠償請求を認めたものです。)があります(東京地判平成8年7月29日交民 29巻4号1089頁)。
3 おわりに
自転車であろうが、車であろうが、人に怪我をさせてしまった以上、その責任を負わなければならないことに何ら変わり有りません。
そのため、自転車に乗ることが多い方は、自動車と同じように、対人賠償無制限の保険に入っておいた方が安心でしょう。また、加入された場合、自転車に乗る方も安心ですが、適正な補償を受けることができるという意味で被害者の方にとっても望ましいといえるでしょう。