こんにちは。今回は、交通事故によりPTSDに罹患した場合、後遺障害として認められるのか否かについてお話したいと思います。
PTSDの症状としては、再体験症状、回避・麻痺症状、覚醒亢進症状ですが、その他にも、抑うつやパニック発作などもあり、多様な症状がみられます。PTSDを巡る損害賠償請求は、いじめ等の不法行為によってもなされうるものですが、多くは交通事故訴訟においてなされると言われています。
PTSDに基づく後遺障害等級としては、7級、9級、12級、14級の認定の可能性があります。しかし、実際の裁判例では、東京地裁平成14年7月17日判決でPTSDに基づく損害賠償請求は否定される傾向にあります。そこで、今回は上記判例を紹介したいと思います。
事案としては、加害車両がセンターオーバーをしたため、原告車両に正面衝突し、父親の運転する後部座席に同乗していた被害者が、頸椎捻挫などの傷害を負った事案です。
判例では、PTSDの判断については、①自分または他人が死ぬ又は重傷を負うような外傷的な出来事を経験したこと、②外傷的な出来事が継続的に再体験されていること、③外傷と関連した刺激を持続的に回避すること、④持続的な覚醒亢進症状があることという要件を厳格に適用していく必要があると述べたうえで、①については、被害者が比較的軽傷であり、父親も重傷を負ったとまではいえないこと等、②については、被害者の見る悪夢が事故に限られないこと、③については、事故後、頻繁に車に乗っていること、④については、被害者が主張する睡眠困難、集中困難等の程度が明白ではないこと等からPTSDを否定しました。
なお、PTSDが否定されても、一定の損害として後遺障害を認めた判例もありますが、そのような判例の中には、心因性の減額を認めたものがあります。また、地裁と高裁で異なる判断がなされたものもあります。いずれにしろ、訴訟においてPTSDを損害として認めてもらうのは高いハードルがあるといえるでしょう。