こんにちは。

 会社員が交通事故の被害に遭った場合、有給休暇を使用して、給与に替わる手当を取得し欠勤による不利益を回避する場合があります。

 この場合、表面上は減収がなく、「損害」はないように思えます。

 しかし、裁判例は、被害者の年休権の不本意な行使によって減収がないように見えるにすぎないという考えの下、「損害」ありと認める傾向にあります。

 例えば、名古屋地裁平成15年9月19日判決は、事故の結果被害者が使用した有給休暇約44日間につき、事故前の年収(約993万円)を基礎として、約120万円の休業損害を認めました(993万円÷365日×44日間=約120万円)。

 また、有給休暇を使用することにより実際の減収はないことから休業損害は認められないとしつつ、被害者は自己都合で有給休暇を有効に使用できなくなったとして、慰謝料の算定に当たって考慮すべきとしたものもあります(大阪地裁平成15年8月27日判決)。

 以上より、有給休暇を使用したことによる損害については、休業損害で考慮するか、慰謝料で考慮するかなど、理論構成に若干の違いはあるものの、肯定的に捉えるのが実務の主流と言えます。