こんにちは。
 交通事故による賠償金は、原則として示談時に支払いを受けるものですが、就業が不能な期間の生活費等の必要な費用を確保するために賠償金の内払いを求めることができます。
 今回は、この賠償金の内払いによって生じた問題についてお話します。

 賠償金の内払いは、法律上の根拠に基づくものではなく、あくまで保険会社の対応として認められるものです。
 そのため、内払いは、全ての事故について認められるものではありませんが、被害者の方に休業損害が発生しており、休業損害証明書等により損害額が立証されている場合は、その休業損害に相当する金額について内払いを認めることが多いと見受けられます。

 今回問題となったご依頼者様も、賠償金の内払いとして、お給料の一部を半年近く保険会社から支払ってもらっていた方でした。
 ところが、内払金の内訳を保険会社に確認すると、休業損害としての内払いは事故後の3ヵ月足らずであり、4か月目以降は慰謝料からの内払いという名目で支払われていることが分かりました。

 このように内払金の名目が変わるとどのような事態が生じるかというと、本来なら示談時にまとめて支払いを受けられたはずの慰謝料が減額された金額となってしまうのです。

 今回のご依頼者様も、裁判基準によって慰謝料を計算すれば90万円ほどの慰謝料の支払いを受けられるはずであったにもかかわらず、内払金が認定された休業損害額よりも高額であるため支払われるべき慰謝料の額が減り、半分以下の金額の提示となってしまっておりました。

 そこで、弁護士としては、休業損害の算定期間を延ばす交渉と慰謝料額の増額の交渉を行うことになります。
 今回の案件については、なんとか交渉で決着することができましたが、保険会社の対応次第では訴訟に発展する案件であったと思います。

 このように賠償金の内払いは、示談時に思わぬトラブルを巻き起こす可能性もはらんだものとなっております。内払いを受ける際は、この内払いがどのような損害項目の内払いなのかを予め確認しておくことをおすすめいたします。

弁護士 古関俊祐