皆様、こんにちは。
 今回は、人身傷害補償保険についてみてみたいと思います。

 人身傷害補償保険とは、自動車事故によって被保険者が死傷した場合に、被保険者の過失割合を考慮せずに被害者側の保険会社の基準に従って算定された損害額を填補する保険です。

 この人身傷害補償保険は、平成10年の保険自由化に伴い開発され、その後普及し、現在では各保険会社が導入しています。この保険は、保険会社の約款所定の基準により積算された損害額について、契約保険金額の限度で保険金を支払うことを内容とするもので、実損填補型傷害保険になります。

 人身傷害補償保険は、自動車の運行に起因する事故あるいは自動車の運行中における飛来中のもしくは落下中の他物との衝突、火災、爆発、又は自車の落下による急激かつ偶然な外来の事故により被保険者が死傷することを要件として、定められた保険金が保険会社から支払われます。

 人身傷害補償保険により支払われる保険金は、保険会社が算定する損害額及び保険契約者又は被保険者が支出した所定の費用から、自賠責保険や他の任意保険契約から支払われた保険金、加害者から取得した金額等を控除した金額となります。

 保険会社はかかる支払により被害者の加害者に対する損害賠償請求権を代位し(その限度で同損害賠償請求権は当該保険会社に移転し)、加害者にその過失割合の範囲で損害を請求することになります(保険法25条)。

 人身傷害補償保険は、加害者の責任の有無、自己の過失の有無や自己の過失割合を考慮することなく、契約している保険会社より、保険会社の支払基準に基づき保険金の支払を受けることができます。また、加害者との交渉も不要になるなど、迅速な填補が受けられる点もメリットといえます。さらに、保険契約者本人だけでなく配偶者及びその同居の親族も保証の対象になっている点や単独事故でも補償されるという点で、補償の範囲は広いといえます。

 ただし、保険会社は人身傷害補償保険における損害額を、自賠責基準とも裁判基準とも異なる保険会社独自の算定基準で算定するため、各保険会社が定める約款における算定基準に注意する必要があります。自動車保険に人身傷害補償条項がある場合には、まず人身傷害補償条項の内容確認をした方がよいでしょう。

 そして、前述のように人身傷害補償保険によって支払われる保険金は、保険会社が独自に設定した基準によって計算されるため、実際の裁判で認定される損害賠償額よりも低額に抑えられているといえます。

弁護士 髙井健一