こんにちは。
今回は、裁判例(名古屋地裁平成23年11月18日判決・自保ジャーナル第1866号)をご紹介したいと思います。
事案は、21歳の男子理系大学生(原告)が、交差点を自動二輪車で走行中、一時不停止で交差点に進入してきた被告車両に衝突され、右肩8級6号、右肘、右手各10級の併合7級の後遺障害を残したとして、被告に対し、既払額を除く約8296万円の支払いを求めて、訴えを提起したというものです。
裁判所は、原告の後遺障害逸失利益について、原告が右手を使えず、物の持ち運びができず、車の運転もできない等の事情から、原告の収入に減収は見られないものの、後遺障害により仕事に支障がでており、将来、昇進・昇格に不利益になることも考えられるとして、賃金センサス(男子大卒)を基礎に60歳まで25%、67歳まで56%の労働能力喪失による後遺症逸失利益を認めました(請求額約6425万円に対し、認定額約3042万円)。
また、休業損害について、原告は、2年間就職が遅れた分を請求していたところ、裁判所は、就職活動を始めていた時期の本件交通事故で、就職を諦めて大学院に進学したことは、理系で大学院に進学することがそれほどまれではないことを考慮すると、2年分の損害全てを事故と相当因果関係ありとするのは難しいとして、7割の限度で休業損害を認めました。
さらに、慰謝料の増額について、原告は、被告による過失相殺の主張が慰謝料の増額事由に当たると主張していたところ、裁判所は、被告が何の根拠もなく、ことさら過大な過失割合を主張した場合は別として、類似例を指摘して具体的な過失割合を主張したことをもって、増額事由とすることはできないと判示しました。
本裁判例は、後遺症逸失利益や休業損害等の様々な論点に言及したものであり、実務の考えを探るヒントになると思い、紹介させていただきました。