皆様、こんにちは。
1 はじめに
今回は、ケース研究322号210頁「当事者が遺産分割調停の法的枠組みを理解して調停合意に向かうために」と題する記事を読んでのコメントです。
このケース研究という雑誌は、主に家事事件に関する裁判官やその他専門家の論考や特集が組まれた雑誌で、一般にはあまり知られていないかと思います。
この度、当該雑誌の発行頒布業務が家事事件研究会から日本調停協会連合会されたとのことで、購入のためのアクセス先が変わりました。
2 記事について
今回、読んだ記事は、東京家庭裁判所の裁判官が、遺産分割調停事件で裁判所として取り組んでいる事件進行を円滑にするための工夫が書かれたものです。
記事の前半部分に、遺産分割調停の困難イメージの原因について触れられており、遺産分割が未分割の積極財産を分割することであるとの理解が広まっていないことや論点が多岐にわたること等が言及されておりました。
確かに、遺産分割の内容については、調停で協議できること、できないことが存在し、一般の方々からしてみれば、調停を申し立てさえすれば、家庭裁判所で一切合財を話し合うことができるであろうと思うのは無理からぬことだと思います。他方で、弁護士としては、調停や審判の限界について、相談に来られる方にわかるように説明する努力が求められているようにも感じました。
今回、中でも目を引いたのは、裁判所が論点や事件の進行についてチャート図やフローチャートを作って案内していることです。例えば、被相続人が亡くなる前後で引き出された預金等といった使途不明金は得てして争点になりやすいのですが、これについても細かく場合分けを行い、その取扱いについて一般の方にもどうにか理解してもらえるように図を作っています。また、このような争点は、必ずしも調停や審判で解決できるとは限らず、民事訴訟を提起せざるを得ないこともありますが、その点も視野に入れた調停期日の進行スケジュールもフローチャートで用意しているようです。
以上のように、家庭裁判所も遺産分割調停において、当事者が代理人を頼んでいるとは限らないケースや理解が困難なケースを想定して、ビジュアルも意識したわかりやすい説明をしようと工夫を続けていることが窺われました。
私は、相談時にその場で、手書きのフローチャートを書くのが精いっぱいですが、理解を進めるための工夫を講じる必要性を感じます。
今回もお付き合いいただきありがとうございました。