先日、義理の母(A)が亡くなりました。私(X)は、長い間、妻(B)とともに、重度の認知症となった義理の母の介護を行ってきました。私は、義理の母の遺産分割協議において、私と私の妻が介護してきたことを主張して、遺産を多くもらうことはできるのでしょうか。
ちなみに、義理の母の相続人は、妻と、妻の兄(C)の2人です。

 Xさんに寄与分が受ける資格があるのか、義理の母Aを介護してきたことが「寄与分」が認められる行為に該当するのかどうか、について考える必要があります。本稿では、⑴そもそも寄与分って何なのか、⑵誰が寄与分を受けることができるのかについて検討し、⑶「寄与分」が認められる行為かどうかについては次回に譲ります。

⑴ 寄与分とは

寄与分の制度は、共同相続人の中に、被相続人の生前において、被相続人の財産の維持または増加に特別の寄与をした者があるとき、それを遺産分割において考慮するものです(民法904条の2第1項)。
寄与分は、特別の寄与をした相続人に、相続財産の内から相当額の財産を取得させて、共同相続人間の公平を図る制度です。

⑵ 寄与分を受ける資格

民法は、寄与分権者を「相続人」に限定しています。すなわち、事例において、Bは、寄与分を請求できますが、Xは寄与分を請求できません。

もっとも、相続人の配偶者の寄与行為が、相続人の寄与行為として認められる場合があります。
裁判例においては、「共同相続人間の公平を図る見地からすれば、被代襲者の寄与に基づき代襲相続人に寄与分を認めることも、相続人の配偶者ないし母親の寄与が相続人の寄与と同視できる場合には相続人の寄与分として考慮することも許される」と判断されています(東京高決平成元年12月28日)。

すなわち、相続人の配偶者の寄与は、相続人の寄与と同視できれば、相続人の寄与として考慮することができます。事例において、Bは、Xの寄与を自己の寄与分として請求できる余地があります。

配偶者等の行為がどのような行為がどのような場合に相続人の行為と同視できるかについては、例えば、重い老人性痴ほう症にかかった被相続人の介護を相続人とその夫、娘が交代で、不眠不休で世話をしていた事例において、この事実を寄与分算定の資料としたものがあります(盛岡家審昭和61年4月11日)。他にも、仮にAが農業又は小売業などの自家営業を営んでいたとして、BとともにXが専従した場合や、XがBの手足となって従事している場合にXの寄与をBの寄与と同視することができます。また、Bが全く別の仕事に就いてXだけがAの営業を手伝っていたとしても、XがBの意思と独立してではなく、Bとの話し合いでBに代わって従事している場合、Xの寄与をBの寄与と同視することができます。
このように、Xの寄与行為が、Bの寄与行為として考慮されるためには、Aに対する貢献について、XとBの協議・協力があったかどうかがとても大事です。

だれが寄与分を主張できるのか、寄与分を主張できるケースかなどとても分かりにくいと思いますので、お困りでしたら遠慮なくご相談ください。

弁護士 江森 瑠美