皆様が誰かの保証人となる機会は少なくないのではないでしょうか。たとえば、賃貸借契約で締結する場合などが多いと思いますが、皆様のお父様やお母様も誰かの保証人になられている可能性もあると思います。この保証人の地位は相続されるのでしょうか。

何が相続の対象となるかについて、民法が定める原則は、「相続人は、相続開始の時から、被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継する」(民法896条本文)というものです。権利だけでなく、債務も相続の対象となります。
一方で、民法は、「被相続人の一身に専属したもの」については、相続の対象とならないとしています(民法896条但し書)。「被相続人の一身に専属したもの」とは、被相続人以外の者がその権利や義務を有しているのは適当でない性質を有する権利や義務のことをいいます。

まず、通常の保証債務については、被相続人以外の者が履行してもよいと考えられており、原則通り相続されることになります。

ところで、賃貸借契約の賃借人の保証人になった後、賃貸借契約が何度も更新され十数年も経ってしまったため、保証人となったこと自体を忘れてしまったというようなことがよくあります。しかし、賃貸借契約において一度賃借人の保証人となれば、賃貸借契約の更新後も、特段の事情がないかぎり、保証人の地位は存続するとされます。したがって、お父様やお母様も覚えていないような保証債務の履行請求が、お父様やお母様の死後、突然やってくるなどということも起こりえますのでご注意ください。日ごろから、誰かの保証人となったことがあるのか、確認しておくことが重要でしょう。

それでは次に、雇用契約の際によくなされる身元保証や根保証契約などの信用保証はどうでしょうか。まず、身元保証は、原則として相続の対象とはなりません。次に、限度額および期間の定めのない根保証契約は、特段の事情のない限り、保証人の死後生じた債務について、相続人は保証債務を負担するものではないとされており、通常の保証契約とは異なる扱いがされています。