Q: 父の自筆証書遺言が見つかりましたが、長男夫婦が自分たちに有利になるように無理やり書かせたことがわかり、遺言どおりに分けることが納得できないと相続人間で言い争いになっています。相続人である私も裁判まではするつもりはなく、長男も自らの否を一部認めているため、相続人間で遺産分割協議書を作成して、遺産の分け方を決めたいと思っています。
遺言書と異なる遺産分割協議をすることはできるのでしょうか。

A: 相続人の全員が同意するなら(遺言書に遺贈の記載があれば受遺者も含みます。)、遺言と異なる遺産分割協議を成立させることは可能です。これは公正証書遺言でも自筆証書遺言でも変わりません。

但し、遺言があることは共同相続人全員に知らせておく必要があると思います。他に相続人がいるにもかかわらず、それを知らせないで長男と相談者の間で話を進め、他の相続人が遺言書があることを認識しないまま遺産分割協議をすることは避けるべきです。

なぜなら、他の相続人から、遺言書の存在を知らないまま遺産分割協議があれば、その存在を知らなかったことを理由に錯誤無効であると主張されたり、遺言書が自筆証書遺言の場合、遺言書を隠したり破棄したりすると、相続欠格事由にあたると主張されたりと、後日、蒸返して争いにになる可能性があるからです。
また、遺言書に遺言執行者の指定がある場合には、遺言執行者にも相続人全員で遺産分割協議を成立させたい旨を説明しておくべきでしょう。

また、一度遺言書記載のとおり遺言執行をした後、再度遺産分割協議で分割方法を決めなおすとき等、税務上の問題が起こることがあります。したがって、遺言と異なる遺産分割協議をする場合は、あらかじめ税理士等に相談することをお勧めします。