皆様こんにちは。弁護士の菊田です。
本日は、国際的な相続についてお話ししたいと思います。
相続人の中に外国人が含まれていて、その人が国に帰っているようなケースでは、単に通訳や翻訳を使うだけでなく、日本人のみが相続人であるケースとは異なる手続が必要になります。このことは、審判、訴訟等の法的手続をとる場合であっても、交渉で進める場合も同様です。
では、具体的には、どのような手続をとることになるのでしょうか。
① 審判、訴訟等の法的手続をとる場合
遺産分割の審判等は、原則として相続人全員を当事者とする必要があり、相続人に外国人が含まれていても、その人を除いて手続を進めることができません。
そして、審判、訴訟等の手続をとる場合には、申立書等の書類を当事者に対し送達する必要があり、当事者が外国に居住している場合は、当該外国の住所に宛てて送達する必要があります。この場合は、裁判所から領事館に嘱託する、または「民事又は商事に関する裁判上及び裁判外の文書の外国における送達及び告知に関する条約」の締約国である場合には当該国の中央当局を通じて送達する等の方法によって送達してもらうことになりますが、国内の住所に対し送達する場合と比較して、非常に時間がかかってしまう可能性があります。加えて、申立書等の翻訳文をつける必要もあります。
② 交渉で進める場合
この場合は、まず、当該外国人が日本語を話せない場合、翻訳や通訳等で費用がかかってしまいます。
加えて、遺産分割協議書に署名押印してもらおうと思っても、日本に居住していない場合、日本以外の国ではそもそも押印の文化がない国が多いことから、印鑑証明書も存在しないことがほとんどです。「本人がサインしてるからいいじゃないか」と思われるかもしれませんが、本人のサインである証明がないと、法務局や金融機関等においては正式な遺産分割協議書と認めてくれず、登記の移転や預金の払い戻し等には応じてくれないケースがほとんどではないかと思います。
このように押印の文化のない国の外国人の場合、例えば署名証明等を遺産分割協議書につけてもらうことで、本人の署名であることを証明する方法があります。また、この場合は、日本側からも、被相続人の死亡証明書を送付する等の一定の手続をとる必要が生ずる可能性があります。
以上のように、相続人の中に外国に居住する外国人が含まれている場合には、日本人のみが相続人となるケースと異なる手続が必要になります。もしこういったケースでお困りでしたら、お気軽に弁護士法人ALGに御相談下さい。