平成26年4月1日から、日本においてハーグ条約の適用が開始されました。
 国際結婚の夫婦間で国境をまたいだ子の連れ去りが起こった場合などに、子の返還や面会交流などを請求していく手続きです。
 日本がこのような条約の批准に踏み切った背景には、それだけ国際結婚・国際離婚の増加、在外邦人や在日外国人の増加があるということなのでしょう。
 このように、日本と外国人との関係が深くなるということは、相続分野においても国際的な相続問題が起こる可能性が高まるということになります。
 そこで、本日は国際相続の基本についてお話します。

 まず、日本に住んでいる外国人が亡くなった場合、誰が相続人になるのかを決めるルールは、その外国人の本国法になります(法の適用に関する通則法36条)。
 世界の多くの国の法律で、配偶者や子供は相続人となるのではないかと考えられますが、両親や兄弟姉妹が相続人になるかどうかのルールは、伝統や宗教等によってさまざまなパターンが予想されますね。
 この場合、二重国籍の方や無国籍の方については別途「本国法」が何かを決めるルールがあり、その方に最も関係の深い法律などが選ばれます。
 アメリカなどは、州によって法律が異なりますので、その方の所属していた州の法が「本国法」になったりします。

 次に、相続財産の範囲も、その方の本国法によって確定されます。
 相続財産の範囲なんて、どの国の法律等と決めなくてもはっきりしているだろうと思ったら大間違いで、名義に関わらず、婚姻後の財産は夫婦共有の財産としている法律もあるので、しっかりと根拠となる国の法律を参照することが必要です。

 国際相続は、他国の法律を根拠にする可能性があることから、非常に複雑で時間のかかるものとなることが多いようです。

弁護士 井上真理