こんにちは。
本日は、相続人の間の利益相反についてお話をします。

人が死亡し相続が開始されると、単独の相続人しかいないというケースよりも、複数の相続人がいるというケースの方が多いと思います。
複数の相続人がいる場合、全員が全く違う意見を言っており、収拾がつかなくなっていることもあります。これは、遺産の全体のパイは決まっており、一部の相続人が取得する遺産が多くなると、他の相続人が取得する遺産が必然的に少なくなるという関係になっているためです。このように、関係当事者の一部が利益を得て、他の人が損をするという関係になっている状態を、「利益相反」と言います。

複数の相続人がおり、2グループに分かれて対立していたりすると、グループ内の相続人は、協力者のように感じられます。たしかに、分割方法とか、財産の金額評価など、具体的な争点では協力関係にありますが、グループ内のメンバーは、取得できる遺産の増減においては互いに利益が相反しています。
複数の相続人から一人の弁護士がグループ内の全員から委任を受けて遺産分割調停を行うことはできますが、相続人どうしがこのような関係にありますので、各相続人から「A弁護士が他の相続人の代理人になることについて異議はありません。」という内容の申述書をもらわなければなりません。同じグループ内のメンバーなのにこんなことをしなければならないのは、奇妙に感じるかもしれませんが。

また、夫が亡くなり、妻と子が相続人となるケースはよくありますが、子が未成年の場合に経なければならない手続きがあります。妻と子は、基本的に、一方の取得分が多くなると他方の取得分は少なくなるという関係になっていますから、利益相反です。ところが、妻は子の法定代理人(親権者なので)なので、子の代わりに遺産分割の条件を決めることができます。したがって、これを許すと、妻が、自分の取得分を多くして、子の取得分を少なくするということが自由にできるようになってしまいます。

そこでこのような場合に子の利益を守るために、家裁で子のための「特別代理人」を選任しなければならないとされています。親が子の利益を踏みにじることはないと信じたいですが、形式的に、このような予防的な策が講じられているのです。未成年の子を残して親が亡くなっただけでも悲しいのに、特別代理人選任という手続きが追加されるなんて、余計につらくなりそうですね。