「自分が亡くなっても、大した財産があるわけでもないし、
息子や家族はみんな温和だから、相続争いになんてならない。
遺言書は、たくさん財産を持っている特別な人が作るもの。」
多くの人が、そう思っておられることでしょう。
でも、ご家族が今、仲良く穏やかに暮らしておられるのは
それぞれが安定した収入を得て、安定した生活を送れているからではないでしょうか。
いつかあなたが亡くなったとき、息子さんが
「ちょうど資金繰りに困っていて、少しでも多くの遺産をもらいたい」
という考えを持っていたらどうでしょう?
「自分が父親の身の回りの世話をしてきたから
その分遺産を多めに貰って当然だ」と思っていたら?
ご子息がみな遠方にお住まいで、実家に誰も住まなくなるとしたら
その家を売却するのか、売却しないで維持するのか、
維持するとしたら誰が固定資産税を支払うのか。
そんなことで意見が食い違うことがないと言い切れるでしょうか。
そればかりではありません。
実際に相続という事態が生じたとき、ご子息の意向にかかわらず
そのご家族やその他の知人・友人などから、
「もっと取れるから権利を主張しなさい」と焚き付けられる、
なんてこともよくある話です。
あなたが元気な間、ご家族がみな日々の生活に不自由なく
仲良く暮らしていれば、あなたの残した財産をめぐり
争いになることなど、想像できないかもしれません。
でも、ひとたび相続争いが表面化してしまうと
せっかくこれまで仲良くやってきた兄弟姉妹や親族の関係が
完全に破たんしてしまうことが珍しくないのです。
このように想像もできないような争いを避けるために
とても強力なツールとなるのが、「遺言書」です。
あなたが元気なうちに、ご家族の将来に思いを馳せ、
誰にどのような財産を分け、どういった方法で分割するのか、
明確な内容の遺言書を作っておけば
いざ相続という場面で、ご家族は
遺言書のとおりに遺産を分ければよいわけですから、
相続争いが生じる可能性は格段に下がります。
さらに、相続をめぐるトラブルとして見落とされがちなのが、
亡くなった方の銀行等の金融機関の口座が
預金名義人が死亡した事実がわかった時点で凍結され、
預金の引き出しや解約などの手続が一切できなくなることです。
一度凍結された預金口座から預金を引き出すためには
相続人全員の実印が押印された同意書が必要となります。
しかしながら、公正証書による遺言書を残しておけば
そのような同意書がなくても、預金を引き出すことができるのです。
この点からも、遺言書(特に公正証書)を作成しておく重要性が
お分かりいただけるのではないでしょうか。
あなたが遺言書を作成することは、あなたが亡くなった後、
残念な争いが生じてしまう可能性をわずかでも残さないため
また、相続後の手続の煩雑さをあらかじめ少なくしてあげるために
あなたがご家族に遺すことのできる最後の素敵な贈り物になるはずです。