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故人の愛人は、相続人にはなりません。故人の愛人が遺産を譲り受けるためには、故人が愛人に対して遺産を贈与する旨の遺言書を残していることが必要となります。
今回の場合には、質問者さんのお父様は、A子さんへ遺産を譲ることを内容とする遺言を残していなかったようですので、A子さんが質問者さんご家族へ遺産を渡すよう請求する法的な権利はありません。
そこで、質問者さんとしては、① A子さんに対して債務不存在確認訴訟(遺産を渡す義務がないことを裁判で認めてもらう訴訟)を提起する、② A子さんに一定額をお渡しして諦めてもらう、③ 弁護士からA子さんへ警告文を発する、といった対応が考えられます。

1 愛人が遺産の分割を請求できるか

 相続人の範囲は、まず第1に故人の配偶者(民法890条1項)と子供(民法887条1項)、子供がいない場合には、故人の両親や祖父母等(民法889条1項1号)、子供がおらず両親や祖父母等も亡くなっている場合には、兄弟姉妹(民法889条1項2号)が相続人となります。法律に定めてある相続人の範囲は、以上のとおりであり、愛人は含まれていません。
 もっとも、相続人でなければ、遺産を譲り受けることができないのかというとそういうわけではありません。故人は、遺言書に愛人へ遺産を譲る旨の記載をする方法があります。遺言書による相続は、遺留分による一定の制限はありますが、故人の意思に沿った遺産の処分が可能となります。

 今回、A子さんは相続人ではありませんし、遺言はあったものの、A子さんに関する記載はなかったようですので、A子さんに遺産を請求する権利はありません。したがって、①裁判でA子さんには質問者さんご家族へ、遺産を渡せという権利がないことを確認する訴訟を提起をし、裁判所にお墨付きをもらうことで、A子さんに対する牽制をするという方法が考えられます。

2 遺産分割協議成立後の遺産の分配の可否

 次に、今回は、すでに遺産分割協議が終了していますので、②遺産の一部をA子さんへ渡すことが可能かということになります。
 遺産分割協議は、相続人同士の話し合いにて成立するものですから、相続人同士で話し合って、遺産分割協議をやり直すこと、遺産の一部を愛人に分配する合意をすることは可能です。
 そのため、質問者さんのご家族で再度話し合って、遺産分割協議の終了後であっても相続人全員が同意をするのであれば、②A子さんへ遺産の一部を分配することは可能です。
 なお、遺産分割協議が終わった後、相続人が取得した遺産をどのように処分するかは相続人の自由です。そのため、質問者さんが自分の相続した遺産の一部をA子さんに渡すことになんら問題はありません。

3 その他

 A子さんがどのように質問者さん家族へ接触しているのかわかりませんが、A子さんの言動によっては、刑法上の「恐喝」にあたる可能性がありますが、なかったとしても、A子さんの請求に法的理由はありません。
 したがって、当該行為について③弁護士からA子さんへ、A子さんに遺産を譲り受ける権利がないため質問者さん家族へこれ以上の催促をやめるよう警告文を発するという方法が考えられます。
 現時点で質問者さんの手元に証拠がないのであれば、次にA子さんが電話又は自宅に来た際にA子さんの発言を録音しておくと言った方法が考えられます。

 なお、A子さんに質問者さんのお父様との間の子供がいる場合には、この子供は相続人にあたるため、遺産分割協議をやり直す必要が出てくる可能性があります。