A.
結論からいうと、認知によってXとBとの間に父子関係が生じ、Bが出生した場合に限り、Aの主張が法律上は認められることになります。

解説

 「認知」とは何か?当然に父子関係が生じないのか?そもそも胎児であるBが相続できるのか?仮にBが死産してしまった場合にはどうなるのか?
 皆様の頭の中にさまざまな疑問点が浮かんだことかと思います。まず、(1) 権利能力の始期、(2) 実親子関係について、ご説明した上で、Yさんがとるべき手段についてご提案したいと思います。

(1)権利能力の始期

 権利能力とは、権利義務の主体となる資格です。
 権利能力は、相続と不法行為等の例外的な場合を除き、「出生」をしないと権利能力が認められません。
 本件は、相続についてのことなので、胎児は既に生まれたものとみなされます(民法886条1項)。もっとも、胎児が死体で生まれたときはこの規定は適用されません(同条2項)。
 したがって、Bが死産してしまった場合には、Bに相続権はなく、Aの主張は認められないということになります。

(2)実親子関係

 裏を返せば、Bが生きて生まれた場合には、AはBを代理して相続権を主張しうることになります。もっとも、その前提としては、BがXと父子関係にあり、相続権がなければなりません。
 では、法律上、父子関係とはいかなる場合に成立するのでしょうか。
 以下、法律上の実親子関係がいかなる場合に成立するのかに遡って説明していきます。眠たくなるかもしれませんが、頑張ってください。

ア 母子関係

 まず、母子関係について、民法に直接的な規定はありませんが、分娩の事実により当然に発生します(最判昭和37年4月27日民集16巻7号1247号)。

イ 父子関係

 次に、父子関係は、子どもが嫡出子(ちゃくしゅつし)か非嫡出子(ひちゃくしゅつし)かによって2通りに分かれます。嫡出子とは、おおざっぱに言えば、「婚姻関係にある夫婦の子」のことです。
 子が嫡出子の場合には、父子関係が推定されます(民法772条)。
 子が非嫡出子の場合には、認知されることによって父子関係が生じます。認知には、任意認知、強制認知の2つのタイプがあります。
 本件は、父であるXが死亡しているので、Xが生前に任意認知をしていない限り、強制認知でしか父子関係が生じません。具体的には、XとBとの間に父子関係が生じるためには、Xの死後3年以内に(民法778条ただし書)、AやB等の「子、その直系卑属又はこれらの者の法定代理人」からの認知の訴え(強制認知)の提起が必要となります。
 ちなみに、強制認知については調停前置主義の例外として、訴訟提起をしたとしても付調停にならないことから(家事事件手続法277条1項ただし書、257条2項ただし書)、訴えを提起して構いません。なお、認知の訴えは、胎児自身はもちろんのこと、胎児を代理して母がすることはできません。