1.節税のための養子縁組

 日本の養子制度には、成立要件が緩やかな「普通養子」と厳格な「特別養子」の二つがあります。なかでも、「普通養子」は、世界的に見ても珍しいほど、成立要件の緩やかな制度です。そのため、実の祖父が実の孫を養子にするなど、親族間で利用される事例も見られます。
 親族間での養子縁組としてしばしばみられるのが、相続税対策のために祖父母が孫と、親が子の配偶者と縁組をする、といったいわゆる節税養子があります。(制限はありますが)相続人が増えれば、非課税枠が増えるなどして、一定の節税効果が見込まれます。

2.養子縁組の要件

 ただ、養子縁組の成立には、当事者間に縁組意思があることが要件となります。当事者間に縁組意思のないまま養子縁組をしても、縁組の無効事由となります(民法802条1号)。
 縁組意思とは、簡単にいうと、社会通念上親子と認められる関係を設定することを欲する意思を言います。親子と認められる関係であれば、当事者間に養育や介護をする関係がある、親子としての精神的つながりがあるといったことがありそうです。

 しかし、節税目的の養子縁組の場合、祖父母が孫を養子としても、祖父母は孫を養育しないし、孫も祖父母を親だとは思っていないのが通常でしょう。そうであれば、節税目的の養子縁組では縁組意思が認められず、縁組が無効となってしまうのでしょうか。現に節税目的で養子縁組をしている人は大勢いるのですから無効としてしまうと社会的混乱が発生するおそれもあります。

3.新しい判例

 このような中、先日、最高裁で新しい判決が出ました。
 事例は、祖父が孫を専ら節税目的で養子縁組をしていたところ、祖父の他の娘(孫からみれば叔母)が養子縁組無効を主張していたものです。