1 事例

 例えば、すでに父が亡くなっており、3000万円の生命保険に入っていた母が死亡したとしましょう。亡母には他に財産がなく、この生命保険金の受取人は2人兄弟のうち兄と指名されていた場合、弟はこの生命保険金請求権を法定相続分に従って取得することができるのでしょうか。

2 生命保険金請求権が相続財産に含まれるか

 まず、そもそも生命保険金請求権は相続財産に含まれるのでしょうか。判例によれば、生命保険金請求権は、相続財産に含まれません(最三小判昭和40年2月2日)。なぜなら、死亡保険金請求権を取得するための費用である保険料は、保険契約者である被相続人が生前保険者に支払ったものであって、その被相続人の死亡により保険受取人である相続人に死亡保険金請求権が発生するからです。
 そうすると、上記事例においては、兄は3000万円の生命保険金請求権を取得でき、弟は財産を一切取得できないという結論になりそうですが・・・。果たしてこの結論でいいのでしょうか。