4  相続人による主張

 では、相続人である子が配偶者の貢献行為を自分の寄与分として主張することができないでしょうか。
 この点について、裁判所は以下のような決定を出しています。

東京高裁平成元年12月28日決定(家月42巻8号45頁)

「共同相続人間の衡平を図る見地からすれば、被代襲者の寄与に基づき代襲相続人に寄与を認めることも、相続人の配偶者ないし母親の寄与が相続人の寄与と同視できる場合には相続人の寄与分として考慮することも許されると解するのが相当である。」

東京高裁平成22年9月13日決定

 嫁いで間もなく義理の母が脳梗塞に倒れ、その後の入院介護、在宅中の日常生活の世話などを行っていたところ、義理の母が亡くなり夫を含む子供たちが相続人となった際、夫が妻の介護理由に寄与分を主張した事案で、

「被相続人の介護は、同居の親族の扶養義務の範囲を超え、相続財産の維持に貢献した側面があると評価することが相当である。・・・・・抗告人(相続人の妻)の履行補助者として相続財産の維持に貢献したものと評価できる」

として、寄与分を認めています。

 この決定にも示されているように、実務においては、相続人以外の者がした貢献行為を相続人自身がした貢献行為と同視し、当該相続人に対し寄与分が認められるとの処理がなされています。
 したがって、自身が相続人となっている方で、自身の配偶者やお子さんが被相続人に貢献した(被相続人の家業に従事した、被相続人の介護を熱心に頑張った等々)というような方は自身の相続分を増加させることができる可能性がありますので、一度専門家にご相談されることをお勧めいたします。