1.特別受益ってなに?

 相続人の中に、被相続人から遺贈や多額の生前贈与を受けた人がいる場合、その受けた利益のことを「特別受益」といいます
 特別受益が認められる場合、その受益分を相続算定にあたって考慮し、計算し直すことができます。
 特別受益の制度は、共同相続人間の不平等を是正し、実質的平等を図るための制度です。したがって、共同相続人間が同程度の利益を受けている場合は、共同相続人間に不平等があるとは言えないので、計算し直さないことが多いです。

 特別受益の種類としては、①遺贈、②婚姻若しくは養子縁組のための贈与、③生計の資本としての贈与の3類型があります。実務上問題となるのは、③生計の資本としての贈与が多いものですから、以下では③生計の資本としての贈与について検討します。

2.生計の資本としての贈与

 重要な視点は、相続財産の前渡しと認められる程度の贈与があったといえるかどうかです。
遺産総額や被相続人の収入状況からして多額と言える額の贈与があるか、という視点も重要です。

 短期間で消費されてしまうような少額の贈与、たとえば、5万円や数10万円の贈与は、認められにくい傾向にあります。
 また、ある程度高い金額であっても、扶養義務に基づく援助の場合は、特別受益とは認められません。たとえば、親が働かない子に扶養のためにお金を渡している場合、働かない子に渡しているお金は特別受益認められ難いでしょう。仮に5万円や10万円程度の援助が、相当長期になって数百万円や数千万円になったとしても、特別受益と認められる可能性は乏しいと言えます。

 特別受益は、特別受益の該当性の判断、計算方法、手続き等複雑ですから、特別受益について主張する、又は主張されている場合、専門家に相談されることをお勧めします。

弁護士 江森 瑠美