皆様、こんにちは。
1.はじめに
平成28年3月23日に最高裁判所が遺産分割をめぐる事件、具体的には遺産分割の審判で預貯金が対象となるか否かについての審理を大法廷に回付したとの報道が出ました。(※)
最高裁判所は、5名の裁判官で構成される小法廷と15名の裁判官で構成される大法廷という2つの形態で使い分けていますが、大法廷に回付することは憲法に関わる判断やこれまでの最高裁判例の考え方を変更する場合に用いられると言われております。
すなわち、今回の上記報道からすると、遺産分割の審判における預貯金の取り扱いが変更される可能性があるといえるのです。
※「預貯金は遺産分割対象外」の判例変更可能性 審判で大法廷回付 最高裁 – 産経ニュース
http://www.sankei.com/affairs/news/160323/afr1603230033-n1.html
2.遺産分割前の預貯金の取り扱いに対するこれまでの最高裁の考え方
被相続人の預貯金が相続財産にあたることは明らかです。
ただ、これまでの取り扱いは、遺産分割協議を待つまでもなく、相続の開始と共に当然に分割され、複数の相続人がいる場合には、各相続人に法定相続分に応じて金融機関に対する預金の払戻請求権が帰属することになるとされてきました(最高裁第一小法廷昭和29年4月9日判決など)。
このため、家庭裁判所では、遺産分割審判手続において、相続人同士で預金債権を遺産分割の対象に含める合意があれば審理するものの、そのような合意に至らなければ分割の対象外として扱う傾向にありました。
合意に至らない場合には、各相続人が遺産分割審判が決まる前に金融機関に対して、被相続人の預金の払い戻しを請求することが理論上可能でしたが、金融機関が直ちに払い戻しに応じなかったりして、訴訟にまで至るケースも多々ありました。金融機関側としては他の相続人と共同で預金の払い戻しの請求をしてもらうことで、トラブルの回避を考えていたところがあり、その有り様については長年議論されてきたところでした。
最高裁がどのような変更をするのかについては今後明らかになる模様ですが、遺産分割における預金の払い戻しについて今後の取り扱いに大きな影響を与える可能性があるのではないかと予想されるため、各所の注目を集める判断となりそうです。
今回もお付き合いいただきありがとうございました。