今回は遺言執行者とは何かということを説明したいと思います。
遺言執行者とは遺言の内容を実現する為に必要な行為や手続をする人のことです。
なぜ遺言執行者の規定があるのか
遺言内容によっては、遺言の内容が早期に実現されない場合があります。
例えば、被相続人Xに相続人Y、Zがいたとします。Xは遺言でXが所有する土地をAに遺贈したとします。この時、Y、ZがAへの所有権移転登記手続きに協力するならば、特に問題はありません。問題となるのはY、ZがAへの所有権移転登記手続きに協力しない場合です。
この場合、遺言があるのにその内容が実現できなかったり、あるいは訴訟等の手続きを強いられる可能性が出てきます。
そのような場合に備えて、遺言執行者が置かれます。遺言執行者が置かれた場合には、遺言の執行は遺言執行者に全面的に委ねられるので、相続人には遺言の執行に関して何らの権限、義務はありません。
遺言執行者を定めるにはどうすればよいか
民法上、遺言執行者を定めるために以下の3種類の手続きが用意されています。
① 遺言者が遺言執行者を遺言で指定する場合(民法1006条1項)
② 遺言者が遺言で第三者に遺言執行者の指定を委託し、その第三者が指定する場合(同条1項~3項)。
③ 利害関係人(例えば、相続人、受遺者、相続債権者)の請求により、家庭裁判所が遺言執行者を選任する場合(同1010条)です。
遺言執行者になることができるのは、未成年者と破産者を除く全ての者です(同1009条)。
遺言執行者に指定された場合は遺言執行者になるのは義務か
遺言執行者に指定されたとしても、遺言執行者になる義務はありません。遺言執行者に指定された者は、遺言執行者に就職するか辞退するかを相続人に対し意思表示する必要がありますので遺言執行者に指定されたからといって遺言執行者にならなければならないという事はありませんのでご安心くさだい。
ただし、相続人その他の利害関係人は、指定された遺言執行者に対して、相当の期間内に遺言執行者に就職するか、辞退するかの確答をするように催告することができます。催告された者が、期間内に確答しなかったときは、遺言執行者に就職したものとみなされる(同1008条)のでご注意ください。
遺言執行者でなくなる場合
遺言執行者がその任務を怠ったときやその他正当な事由があるときは利害関係人(上記のように、相続人、受遺者、相続債権者)は、遺言執行者の解任を家庭裁判所に請求することができます(同1019条1項)。また遺言執行者は、正当な事由があるときは、家庭裁判所の許可を得て辞任することができます(同条2項)。
遺言執行者の権利義務、主な任務
遺言執行者は、遺言の執行に必要な範囲で、遺言に関する一切の権利義務を有しています(同1012条1項)が、あくまで遺言に関する権利義務なので、権利義務の範囲は、遺言の内容によって決定されます。反面、相続人は相続財産について相続財産の処分や遺言の執行を妨害することができません(同1013条、1014条)。
遺言執行者は就職すると、遅滞なく相続財産について財産目録を作成して相続人に交付しなくてはなりません(同1011条1項、1014条)。
遺言執行者は、遺言の執行に関連する権利を主張したり、自己の名において訴訟の原告や被告となることができます。これを法定訴訟担当といいます。
遺言執行者の報酬
遺言に遺言執行者の報酬が定められている場合や遺言に報酬が定められていない場合でも、家庭裁判所が相続財産の状況その他の事情により報酬を定めたときは、遺言執行者は任務の終了後に報酬を受けることができます(同1018条)。