1.相続財産調査
被相続人が死亡時に有していた財産(マイナスの財産も含みます。)が相続の対象となることは、一般に知られているかと思われますが、被相続人がどのような財産を有していたのかについては徹底的に調査する必要があるといえます。
2.マイナス財産の調査はもちろん
まず、借金などマイナスの財産が多くあった場合には、そもそも相続してしまってよいのかという問題が生じ、相続放棄をしてしまった方が得策のケースもありますので、プラスの財産とマイナスの財産の合計額を厳密に計算する必要があります。
3.プラスの財産もきちんと調べましょう
また、徹底調査すべき財産はマイナスの財産に限りません。プラスの財産、例えば、被相続人所有の土地等の不動産について調査が及ばず、失念していた場合には、世代を経た後に、突如、税務署から固定資産税の請求が来たり、工作物責任に基づく損害賠償請求がきたりする等の大きな問題が起こることがあります。
例えば、被相続人Aが土地を所有していたのですが、相続人らはこれに気づかず、土地は遺産分割されなかったケースです。このとき、土地は、法律的には相続人らの共有となります(もちろん、当の相続人は全く気付いていません)。
この状態で、何十年も時間が経ち、さらに相続が発生すると大変です。すなわち、相続人が亡くなりその相続人がさらに引き継ぐということが繰り返され、ねずみ講の如く土地の共有者が増えていってしまうことになります。こうなると、全く知らない遠い親戚と土地を共有している状態になってしまい、共有者の合意をとりつけて土地を処分しようにも、共有者の居場所が分からない、連絡がつかないなどという事態が起こってしまい、土地の処分自体が簡単にできなくなってしまうことにもなりかねません(もちろんそのような場合には、家庭裁判所の手続を利用することで解決を図れるのですが、費用も手間もものすごくかかります)。
4.最後に
このように相続財産の徹底的な調査は、後世の紛争予防のためにも極めて重要です。遺産分割の際には、相続財産に漏れがないか十分にご注意下さい。
弁護士 森 惇一