被相続人が死亡すると、原則、その遺産は各共同相続人の共有に属します(民法898条)。遺産分割は、この共有状態の遺産を各相続人に分割するものです。
この点、相続税法27条1項は、遺産の合計額が基礎控除額を超える場合、原則として相続開始を知った日の翌日から起算して、「10ヵ月以内」に相続税の申告(課税価格等を記載した申告書を所轄税務署長に提出)しなければならない旨を規定しています。
「被相続人に多額の財産がある」ということ自体は把握していても、その具体的金額まで把握しているケースは少ないでしょう。また、債務は、課税価格から差し引かれるものであるところ、その総額の調査は納付すべき相続税額を知るためにも調査が必要です。
他方、遺産分割の時期について、民法は特に制限しておらず、また、遺産分割協議や調停等は、難航し長期に及ぶこともままあります。
このように遺産調査未了の場合や、遺産分割未了の場合であっても相続税の申告期限は待ってはくれません。期限後申告の場合、無申告加算税と延滞税が発生してしまうのです。
そのため、遺産調査未了の場合には、その時点で判明している遺産総額を基に算定し、また、遺産分割未了の場合には、民法の法定相続分の規定等に従い各相続人に対する課税価格を算定し、一旦仮にこれを申告しておくこととなります。
その後に多額の遺産が発見された場合や、分割の結果法定相続分よりも多く遺産を取得した場合のように、仮申告よりも多くの遺産を取得した場合、修正申告の上、不足分を納付することになります。
反対に、分割の結果、法定相続分よりも少ない遺産を取得する結果となった場合、4ヶ月以内に更生請求を行うことにより、払い過ぎた相続税を取り戻すことになります。
なお、相続税の申告の他にも、故人の所得税の準確定申告を行うことが必要な場合があります。年末調整にて保険料等の控除を行うことなく死亡した場合のように、専ら還付目的の場合はともかく、個人事業を行っている人等の場合のように、申告とともに納付を行う必要のある場合は特に注意しなければなりません。
この準確定申告は、相続開始を知ったときから4ヶ月以内に行う必要があります。その手続は相続人が行う必要があり、相続人が2名以上の場合、原則全員の連署で行います。他の相続人の氏名を付記して各人が別々に提出することもできますが、この場合、他の相続人に申告した内容を通知しなければなりません。