当ブログは、いつもわりと深いテーマについての記事が多いですので、今回と次回においては、相続が全く分からない方向けに基本的な知識をQ&A方式で解説致します。他の記事を読まれる前に、是非ご一読下さい。

Q1: 相続とは何ですか。

A: 相続とは、人が死亡した際に、その人が有していた権利や義務を特定の人(相続人)が引き継ぐことを言います。

(解説)
権利だけではなく義務(借金)も引き継いでしまうことに注意が必要です。うっかり借金等の負の遺産を引き継いでしまい、ご自身が借金取りに追われることになりかねません。

Q2: 相続はいつ発生するのですか。相続するのに何か手続は必要ですか。

A: 相続は、何らの手続きもなく、人の死亡により自動的に発生します。

(解説)
相続のご相談を受けていると、多くの人が意外な程このことをご存じありません。「父は死んだが、相続はしていないです。」というような発言をよく耳にします。おそらく、相続と、相続後に共同相続人間で行われる遺産分割のことを混同しているのではないか思うのですが、相続は、人の死亡により自動的に発生してしまうので、「被相続人である父が死亡したのに相続は発生していない。」ということはあり得ません。

Q3: 遺言書はありません。誰がどのくらい相続するのですか。

A: 遺言書がない場合、法定相続人毎にどれだけの遺産を相続するかを民法が定めているので(このことを法定相続分と言います。)、それに従って相続分が決められることになります。

(解説)
具体的には、以下の図のようになっています。

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出典:『リーガルクリニック・ハンドブック』

Q4: 亡くなった父に借金があるので、相続したくないのですが・・。

A: マイナスの財産の方が多いのであれば、相続放棄をすべきです。ただし、相続放棄は、原則として、相続の開始があったこと(≒被相続人が死亡したこと)を知った時から三カ月以内でなければすることができませんので、注意が必要です。

(解説)
民法は、相続が発生した際、相続人がどの範囲で相続をするのか、または相続しないのかについて、①単純承認、②限定承認、③相続放棄という3つの方法を定めています。

①単純承認は、相続人が、被相続人のプラスの財産もマイナスの財産もすべて相続する方法です。
②限定承認は、相続人が、プラスの財産の限度でマイナスの財産を負担するという方法です。
③相続放棄は、そもそも初めから相続人でなかったことになる方法、言い換えれば、プラスの財産もマイナスの財産も一切相続しないという方法です。マイナスの財産の方が多いようであれば、相続放棄をするのがよいでしょう。

 なお、②限定承認や③相続放棄をしなかった場合は、①単純承認をしたとみなされる他、②限定承認や③相続放棄をした後であっても、相続財産を処分する等の行為をすると、①単純承認してしまったとみなされてしますうので注意が必要です。

弁護士 森 惇一