葬儀費用は、通夜・告別式、火葬等の過程で要した費用です。

 葬儀費用は、一時的には、祭祀主宰者(喪主)が負担します。葬式費用の一部負担に宛てられる香典は喪主に帰属しますし、社会的に相応した葬式費用は、何らかの形(例:労働基準法80条、国家公務員共済組合法63条、保険等)で保障されているからです。

 ただ、葬儀費用の負担者は、法律で決まっているのものではなく、相続人の共同負担とするべきという考え方、相続財産からねん出すべきという考え方、慣習・条理によるべきとする考え方があります。ですから、その支出金額や分担について争いがある場合、当事者間の協議や調停の中で調整を図り、それでも決まらなければ民事訴訟で決着をつけます。

 なお、香典は、遺産分割の対象ではありません。香典は、医者への弔意、遺族へのなぐさめ、葬儀費用等の遺族の経済的負担の軽減を目的とする贈与だからです。ただし、相続人間の合意により、香典を考慮して遺産分割をすることもできます。

 葬儀費用に不足が出た場合等、当事者の中で、葬儀費用等の支出額及びその内容に疑問があるとして紛争が起きることがあります。そのときのために、祭祀主宰者は、香典を含む収支の明細を保管し、資料提示をできるように準備しておくことが必要です。

弁護士 江森 瑠美