皆様、こんにちは。

1.はじめに

財産の相続が生じる時、相続人が誰か、という問題が浮上してくることがあります。
もっとも、相続人が誰なのかがわからない、という問題も時に起こってしまうことがあるのです。

平成27年1月30日付けの当職が作成した弊所ブログ記事では、相続人が見当たらないケースにおける特別縁故者に対する財産分与(民法958条の3参照)という特殊な制度の、これまた特殊な事例についてご紹介しました。

今回はその前提となる、相続人が不在の場合における相続財産管理人(民法952条参照)制度についてご紹介します。

2.相続財産管理人とは……?

その名のとおり、相続財産を管理する人であることは間違いないのですが、このような存在が必要となる前提として、相続人が不在もしくは不明であるという状況が存在します。
この状況下では、被相続人の財産は無主物であるため、相続人でない人々が勝手にいじることができません。相続人でない人の中には、財産が欲しい人がいれば、債権者のように相続財産による精算を望む方もいたりしますが、このような人々が混在するケースでは、誰かが勝手に財産を動かしたりすると、無用な争いや混乱を招いてしまうことになりかねません。

そこで、被相続人の債権者や一定の関係があった人が申立人となって、家庭裁判所に申し立てを行い、中立な第三者に相続財産を管理してもらう制度ができました。それが相続財産管理人です。

相続財産管理人は、申立人の自薦と家庭裁判所による他薦により選ばれるルートとありますが、近時は他薦の方法が主流です。官報をご覧になると、相続財産管理人に選ばれた人が公告されています。
多くのケースでは、弁護士など専門知識を有すると考えられている者が選ばれています。

3.相続財産管理人の仕事

大まかに述べると、相続人の有無を調べること(民法958条参照)、相続財産を調べ、管理すること(民法953条、27条)、相続債権者に対して債務の弁済をすること(民法957条1項)、特別縁故者による財産分与の請求(民法958条1項)に対して家庭裁判所に意見を述べること、以上の過程を経てもなお残った財産があれば国庫に帰属できるように処理すること(民法959条)が挙げられます。
いずれにしても、相続財産がなくなるまで管理を続けることになります。

そのため、預金、保険、株式などの金融商品であれば、流出しないように口座を把握していればよいのですが、不動産がそのまま残ってしまっている場合、その維持管理も仕事に含まれてきます。
例えば、相続財産が住居の場合には、必要に応じて、掃除をしたり、害虫駆除をしたり、財産としての価値をいたずらに落とさないような努力も求められることもあります。

果たして、このような地道な管理の末に与えられる報酬(民法953条、29条2項)は、家庭裁判所がそれぞれの案件の内容、すなわち財産の中身やそれらに対する相続財産管理人が行った仕事ぶり等を総合考慮して決定することになっております。

裁判で喧々諤々のやりとりをするような、いわゆる弁護士から想起される仕事内容とは若干毛色が異なりますが、それはそれでやりがいがあるかもしれません。

今回もお付き合いいただきありがとうございました。