離婚をしたい理由としてよく相談されるものに、相手方である配偶者と子供の養育方針に食い違いが生じてけんかが絶えないとか、仕事をしている自分のことを理解してくれないとか、そのようなことがもととなって家庭ではほとんど会話がないとか、挙句には一緒にいられなくなって別居したとかいうものがあります。

 このような事情は、離婚原因のカテゴリーとしては「性格の不一致」ということになりそうですが、すべてが「婚姻を継続し難い重大な事由」(民法770条5号)の離婚原因として認められるかというと、そういうわけではないようです。ある程度の性格の不一致やそれがもととして起こる喧嘩等というものは、どの夫婦にもあると考えられるからです。

 基本的には、性格の不一致が離婚原因と認められるには、双方の努力によっても円満な婚姻関係の回復が期待できない程度であることが必要と考えられています(最判昭和38年6月7日家月15巻8号55頁参照)。裁判例では、夫婦の性格の違いや子どもらの養育状況を問題として夫から妻への離婚請求をした事案で、「原告・被告は、性格的にかなり対照的であって相互に融和し難いきらいがあることは否定できない」と、一定の性格の不一致があることを認めながら、「対照的であるが故にかえってよく融和している例もよくあることであり、また、原告・被告のいずれも、いかなる努力によっても円満な婚姻生活を維持することが期待できない程極端に片寄った性格の持主であるわけではない。」として、婚姻を継続しがたい重大な事由があるとはいえないとしたものがあります(札幌地裁昭和50年3月27日判時798号77頁)。

 少し別の話にはなりますが、このような性格の不一致が主張される場合には、本当は不貞行為があってその不貞を成就させたいため等の真の離婚理由を隠している場合もあるようです。ですから、特に突然一方の配偶者から日頃の言動について非難されるようになり、離婚まで言い出してきたような場合には、一方の配偶者が主張している原因ではない別の原因が見つかるかも知れません。