こんにちは。今日は財産分与についてお話したいと思います。

 離婚をすることについては夫と妻の間に争いはないけれど、財産分与でもめて1年近く調停が続いてしまうということがあります。いったいなぜだと思われますか・・?

 離婚に伴う財産分与とは簡単に言うと、夫婦が婚姻期間中に協力して築き上げてきた財産を離婚のときに分け合うことを言います。もう少し細かいことを言いますと、夫婦財産の清算としての清算的財産分与のほかにも、離婚後の扶養としての扶養的財産分与や、精神的苦痛に対する慰謝料としての慰謝料的財産分与も「離婚に伴う財産分与」の中身と言えます。

 夫婦で築いてきた財産には、例えばマイホームや、預貯金であったり生命保険や有価証券等様々なものがあると思います。そして購入した当時の価値と現在の価値が変わってしまっているものもあります。

 財産を分ける(分与)と言っても、いつの時点の価値を把握して分けるのかが一つ問題となるのですが、実務では別居時点と考えられています。夫婦が協力しあって財産を築けるのは同居時までと考えられるからです。

 では、独身の時に自分で貯金していた預金や、親が結婚する時に持たせてくれた財産等までも分け合うのかというと、これは「特有財産」と言われ、財産分与から外して考えます。とはいえ、この証明が難しいのです。

 例えば「私は独身の時からためていたお金を、結婚する時に1000万円もっていたが、もう20年以上も前のことでその当時の通帳なんて残っていません。主人も私がそんなに貯金を持っていたなんて知らないと思います。」というケースです。

 別居時に二人の預貯金が2000万円あったとすると、奥様のほうは「そのうちの1000万円は私の「特有財産」なので、残りの1000万円を二人で分けましょう」と言うでしょう。一方ご主人のほうは、「妻が1000万円もの貯金を独身時代にできるはずがない、それなら証拠を見せてもらわないと」と言って、2000万円を二人で分け合うべきだと言うでしょう。

 このような場合、奥様の「特有財産」の主張は、婚姻前の旧姓での預金通帳が存在し残高が1000万円であることが証明できれば問題ありません。しかし、古い通帳を手元においている人はどれほどいるでしょうか?

 銀行に取引履歴を出してもらうことは可能ですが、1年ごとにお金がかかるうえ、金融機関も5年を超える顧客データの保管義務までは原則はないので、さかのぼって調べようとしても難しいのです。婚姻期間が長ければ長いほど、「特有財産」の証明は困難を極めるのです。

 こうなってくると、通帳の記帳以外の方法で、婚姻前からの「特有財産」の立証をしていかなければなりません。この資料を集めたり相手を説得していって特有財産があったこと及びその額を認めてもらわなけれななりません。

 調停の期日は、だいたい1か月に1回のペースですので、立証と説得の時間に1年近くかかるケースはまれではないのです。加えて、結婚する前から離婚のときの財産分与のことを考えて「特有財産」の証拠を保持する人も少ないでしょう・・・

 財産分与で調停が長引く理由のひとつにこのようなこともあるようですね。