当事者間で、離婚について話し合いをしても話がまとまらない場合には、家庭裁判所で離婚調停を行う必要があります。訴訟で離婚をすることもできますが、法律上、離婚訴訟を提起する前に、調停を行わなければならないとされているので、訴訟で離婚が成立する場合であっても、調停を避けて通ることはできません。
離婚調停を行う必要が生じた場合に、相手方と顔を合わせることを気にされる当事者の方がいらっしゃいますが、調停成立時を除いて、原則として、当事者が顔を合わせることはありません。
当事者が同席せずに、どのように話し合いを進めるかというと、当事者が交互に調停室に入って、話し合いを行います。調停室では、男女各1名の調停委員と当事者が話をすることになります。
おおよそ、当事者は約30分で交代し、双方が2回ずつ、調停室に入ることが多いので、1回の調停は2時間程度かかります。
相手方が調停室に入っているときは、他方の当事者は控室で待つことになりますが、同じ控室を使うことはなく、さらに、廊下ですれ違うこともないように配慮して、調停委員が控室まで当事者を呼びに来る運用がされています。
また、調停が成立したときは、当事者双方が同席するのが原則ですが、事案によっては同席をせずに合意内容を確認する場合もあり、このような事案では、当事者が全く顔を合わせることなく調停手続が終了することになります。
以上のように調停手続では、当事者が直接話をするのは調停委員となります。調停委員は、離婚調停をたくさん経験しているので、離婚調停の経験のない当事者が、自分のペースで話を進めるのは容易ではありません。
特に、当事者が、特別な事情を主張して、一般的な調停条項と異なる提案をした場合、調停委員に、それは無理ですと言われてしまい、提案そのものを取り下げてしまうことが多くみられます。
しかし、一般的な処理方法が存在する場合でも、特別な事情を考慮して判断するという裁判例が存在する場合があります。このような場合に、自分の主張と裁判例の考え方が同じであると主張できれば、特別な事情を踏まえた調停条項で合意ができるケースは多くなります。
上記のように裁判例を基に主張をするためには、判例を調査したうえで、自分の主張を法律的に行う必要がありますが、これを、当事者本人が行うことは極めて困難です。
当事者本人で調停手続を進めてこられて、手続き途中から、離婚調停を受任した場合に、依頼者の方から、同じことをいっているのに、弁護士が言うと話が通ると言われることがあります。
これは、当事者が主張している内容を、裁判例などを手掛かりにして、法律的な主張として組立て調停委員を説得しているので、調停委員も提案をとりさげろとは言えなくなるからです。
もちろん、調停は、相手方との合意ができなければ成立しないので、弁護士に依頼して主張してもらえば、あなたの主張どおりの調停条項で合意ができる、というわけではありません。
しかし、あなたが、調停委員から、あなたの提案は通常の処理とは違うからあきらめなさいと説得されている状況から、調停委員が、相手方に対し、あなたからの提案を拒んで裁判になれば、裁判で提案どおりに決まる可能性があると話している状況では、調停での合意内容が大きく異なってきます。
調停で、調停委員からあなたの提案は通常の処理とは違うからあきらめなさいといわれた方は、あきらめる前に是非、弁護士に相談してください。