こんにちは。今日は、管轄についてお話ししたいと思います。

 離婚訴訟をしたい場合や、配偶者の不貞相手に慰謝料請求をしたい場合、どこの裁判所に申し立てをすればいいのか、という問題です。これを管轄と言います。

 もっともよく知られているのが、「相手の住所地」です。ただ、相手の住所にすると、自分にとっては遠くて不便であるという場合、他の理由を付けて、自分の都合のいい裁判所に申し立てることも、可能な場合があります。

 例えば、不貞相手への慰謝料請求の場合、「不法行為があった地」にも、管轄権が認められます(民事訴訟法5条9号)。そこで、相手の不貞行為のせいで私は離婚するはめになった、私が配偶者と結婚生活を送り、離婚をしたのはこの場所だ、ということで、自分の住所を不法行為地と主張することもできるでしょう。

 相手がこちらの裁判所でもいいよ、と言った場合(合意管轄)、こちらの選んだ裁判所での手続きに相手が応じた場合(応訴管轄)にも、こちらの裁判所での裁判が認められることがあります。

 また、被告として、相手に都合のいい裁判所へ申し立てられた場合には、「移送申立て」という手続きをし、裁判所を私の家の近くにしてください、と主張することも可能です。裁判所は、移送申立があった場合、申立後に管轄があるかどうかの他、当事者及び尋問を受けるべき証人の住所、使用すべき検証物の所在地その他の事情を考慮して、訴訟の著しい遅延を避け、又は当事者間の衡平を図るため必要があると認めるときには、移送を認めます。

 訴訟以外の調停や審判についての管轄は、もう少しラフなものになります。
 原則はやはり相手の住所地です。

 しかし、この場合にも、両者の合意で裁判所を決めた場合にはこれが認められることがありますし(合意管轄)、申し立てられた手続きについて移送申立てをした場合で、裁判官が事件を処理するのにそちらの裁判所のほうがいいと判断した場合には、移送が認められることもあります。

 話合いが無理だ、裁判所に申し立てをしよう!と思った場合、最初はなかなか裁判所の場所について思い至りませんし、考えたとしても非常に簡単にとらえがちです。でも、遠方の裁判所での手続きは、毎回の交通費も時間もかかりますし、資料のやり取りなども意外と大変です。

 最近は、「電話会議」と言って、遠方の裁判所に直接行かないでも、電話で話し合いができる手続きもありますが、電話会議は使える手続と使えない手続とがあり、必ずすべての手続きが電話で出来るわけではありません。

 裁判所での手続きをする際には、是非管轄についても調べてみて、出来るだけ自分に有利な場所で出来るように認めてもらえるよう、最初の段階から戦略的に動くことが重要です。

弁護士 井上真理