弁護士 仁藤 仁士

皆様、こんにちは。



1 イントロ

 昨年5月に公布された家事事件手続法の施行日が、平成25年1月1日に決まりました。施行日は「公布の日から起算して2年を超えない範囲内において政令で定める日」とされていたことから、具体的な日付が注目されていましたが、7月19日付の官報で上記のとおり発表されました。

 そんな中、折しも書店で、法律書籍で有名な有斐閣の「論究ジュリスト」(2012/春号)にて座談会特集が組まれていたのを発見したので、改めて気になったところを簡単にご紹介します。



2 気になったところ

(1) 手続法という枠組み

  家事事件の手続の進め方については、これまで家事審判法などの個別の法律が定められており、法律上判然としない部分は各家庭裁判所の運用で補われてきました。

  家事事件手続法は、家事審判と家事調停の手続の進め方をまとめたということ、また、上述した従前の法律よりも細かい内容を定めたということで、座談会でも手続保障が進んだと評価されていました。

  ここで、手続保障とは何か?という疑問を抱かれる方もいらっしゃると思います。民事訴訟法を専攻される学者の先生方が使われる言葉ですが、大ざっぱに言い換えてみますと、裁判所に、誰が(手続の主体)、どのようなアクセスの仕方(手続の内容)をできるのか、といったことを法律上定めて、行使できるようにしてあげる、ということです。裁判所に対して事実上お願いすれば応えてくれる事柄もあると思いますが、法律上定めてある方が堂々と頼めますし、裁判所は要件を満たす限り応えなければならないことになるので、きめ細かに手続が定めてある方が、ユーザーにとってはありがたいわけです。

(2) 家事審判官という呼称の廃止

 呼び方なんて瑣末な事柄のようにも思えるかもしれませんが、裁判所の書類に乗る肩書が変わるので、裁判所としては対内的に相応の変化ではないかと思われます。

 そもそも家事審判官とは、家事審判手続における裁判官の呼称にすぎず、我々は極力「審判官」と呼ぶように努めていますが、上記のとおり実態がわかっているために、つい、「裁判官」と呼んでしまうことがあります。座談会で指摘されているように、他の法律や規則では裁判官と記載されているのに家事審判官という呼称を維持し続けるだけの理由がないということで、整理されたというのは、ある意味理解の得られやすい変更だったように思います。

 (3) 管轄規定について

   管轄という言葉ではピンと来ないかもしれませんが、どこの裁判所が担当するのかという問題に置きかえられるかと思います。

   例えば、家事調停事件では相手方となる人の住所地にある家庭裁判所が管轄裁判所となります(家事事件手続法245条1項)。大体はこのように決まるのですが、法律上は当事者が合意した家庭裁判所でも認められます。合意に関わるところは一部の家事審判事件も同様です(法66条1項)。

   合意による管轄の定め方を合意管轄と呼んでいるのですが、これは法律がこうあるべきと考えているというよりは、当事者間が合意して決めたところでもいいよ、という程度のニュアンスで捉えられています。

   ただ、座談会では子の監護に関する事件については合意管轄をそのまま受け入れてもいいのかという指摘が出ていました(163頁・古谷判事発言)。お子さんに関する事件は調査官が面接することがありますが、お子さんにわざわざ遠方の裁判所に来て調査に応じてもらう、という進め方はあまりよろしい方法とは言い難いでしょう。それでも法律上このような事態を制限する趣旨の記載がないのは、両親の良識に委ねたのかもしれません(ダジャレではありません。)。

   他にも、優先管轄(法5条)規定によって、複数の管轄裁判所があるケースでは早い者勝ちで最初に申立てが受理された裁判所が管轄することになりました(後になされた申立ては最初の裁判所に移送されます。)。



3 家事審判や家事調停そのものは既に経験してきた制度ですが、新しい法律による規制下での実施は来年になって初めて接することになります。

  当事者の方はもちろん、おそらく弁護士も最初は条文を確認しながらおそるおそる進めていくのではないかと気弱な予想をしていますが、多少なりとも慎重に臨んでくれる弁護士を選択する方が無難なように思います。



今回もお付き合いいただきありがとうございました。