皆様、こんにちは。

1 イントロ

 共有財産とされる住宅をどのように処理するのかについては事案毎に要望が異なったりして、かなり悩ましいことがあります。

2 検討

 (1) 自宅に住み続けることにこだわりがないのであれば、離婚時に売却して、その売却益を分け合うという処理の仕方はかなりわかりやすいと思います。仮に住宅ローン付きであったとしても、不動産の価値が上回るのであれば、売買代金によって清算できるので後顧の憂いもありません。未払いの固定資産税があっても売却の時点で清算が可能です。

 ただ、売却益の分与の割合について、争いが起こる可能性はあります。誰が最初にいくら払った、という話です。

 裁判所の傾向としては、特段の事情がなければ売却益を半分に分け合うという結論を取ることが多いです。率直なところ気持ちが割り切れるか否かに係るように思います。

 (2) オーバーローンの場合は、不動産を売っても住宅ローンが残ります。計算上マイナスとなるため、財産分与の対象にならない扱いを受けることが多いです。

 しかし、財産分与の対象から外すと、その後に問題が生じる可能性があります。例えば、夫婦の一方のみが住宅ローンを名義人として負担し、他方が不動産に住み続けるという状況になった場合、一方が翻って明け渡しを求めたり、住宅ローンを払いきれずに破産する際に不動産が売却されてしまう可能性があります。

 このような状況では、思い切って離婚時に使用貸借なり賃貸借の設定しておいた方が、住みたい方としては一方的な不利を避けることができるでしょう。もし、ローンの支払いが順調に進んでオーバーローンを脱した場合でも、離婚後2年以内であれば財産分与の調停を申し立てることはできますが、その後は不動産の名義を持っている人が自由に処理できます。つまり、その時点で出て行けと言われたら反論する術がない、という状況になり得ます。

 破産して売却されるという点については、時点まで状況が進んでしまったら住みたい者が買い取るくらいしか選択肢が残されていません。そのため、住みたい方が賃貸借の形式をとるなり、賃料代わりに実質的に住宅ローンを支払うといった体制を取る方が、明け渡しのリスクを可及的に抑えることができるでしょう。

 以上のように考えてみると、一方配偶者が他方配偶者に対して、私が住み続けるけど、名義はあなたのまま、住宅ローンは払ってねという要望を通そうとすることは、独り善がりに思われてしまいやすいだけでなく、将来的にリスキーな選択だといえるでしょう。

3 その他

 個人的に気になっているのは、名義の問題や連帯債務者・連帯保証人の問題です。どういうことかというと、例えば、離婚に際して一方配偶者が住宅ローン付きの自宅を住む方が払い続けるということで一段落した、けれども、他方配偶者が連帯債務者あるいは連帯保証人に名を連ねているのを外して欲しいと言って来た場合です。

 名義の変更に実際応じてもらえるものなのか、恥ずかしながら指摘されている文献を見たことがないのですが、聞いてみないと案外わからないものです。住宅ローン付きの不動産で、住宅ローンの名義は変えず、住宅の名義を他方配偶者の単独所有で変更できないか問い合わせことがあったのですが、それはできないとばっさり断られてしまいました。債権者である金融機関の内規や住宅ローンの契約内容の約款等で定められていたりするそうで、当事者間の合意が形成されていても最後まで気は抜けません。

 今回もお付き合いいただきありがとうございました。