こんにちは。春らしくなってきましたね。

 本日は、離婚にまつわる氏(名字)のお話しをしたいと思います。

 結婚したら、氏が変わるということは一般常識だと思います。

 離婚した時はどうなるかというと、基本は、結婚前の氏に戻ります。しかし、離婚しても結婚していたときの氏のままの人もいますよね。これは、離婚から3カ月以内に、「結婚していたときの氏を使い続けたい。」という「婚氏続称の届出」をすれば、例外的に、結婚していたときの氏を使うことも可能となるためです。また、中には、戸籍上の氏は結婚前の氏に戻るけれど、結婚していたときの氏を通称名として使い続けている、という人もいますね。

 このように、原則は、結婚前の氏に戻り(離婚復氏)、例外的に、結婚していたときの氏を使い続ける事ができる(婚氏続称)ということになります。

 ここまでが基本です。

 では、婚氏続称した者が、結婚前の氏を名乗りたいとなったときに、婚氏続称している以上、もう二度と、結婚前の氏に戻れなくなるのでしょうか。

 民法は、「やむを得ない事由」がある場合は、氏を変更することができるとしています。ですから、この問題に対処する場合も、「やむを得ない事由」があるかどうかが判断されます。ここで、「やむを得ない事由」というのがどのような場合かといいますと、一般的には、変更を認めなければ、社会生活上困るような客観的な事情がある場合であると考えられています。

 しかし、離婚時に婚氏続称した人が、生まれたときの氏に戻りたくなるのは、大して珍しいことではありませんよね。このような場合にまで、「変更を認めなければ社会生活上困るとまでは言えないから、変更を認めない。」というのでは、あまりに杓子定規な感じがします。

 このようなケースでは、判例は、婚氏続称した者が結婚前の氏に変更する場合は、他の場合よりも基準を緩和して解釈すべきと判断しました。

 婚氏続称するか否かは、離婚時に悩むことの一つではありますが、万が一、婚氏続称しても、このような緩和した解釈がなされるのであれば、多少、心の余裕が生まれますね。中には、婚氏続称の期間が11年にも及んでいても、結婚前の氏へ変更を認めた事例もあります(大阪高等裁判所平成3年9月4日決定)。これほど長い間婚氏続称していても、結婚前の氏への変更が可能かどうかは、心配になりますが、具体的な事情によっては、変更可能という判断もあり得ると言うことです。