暴力夫と離婚する場合にも、いきなり離婚裁判を起こすことはできず、離婚調停を申し立てることになります。

 しかし、調停の場合、裁判と違い基本的には当事者が出席しなければならないため、暴力夫と顔を合わす危険性が高くなります。そうすると、それまで暴力夫から逃げて居場所を知られないようにして暴力を振るわれないようにしていたにもかかわらず、調停で顔を合わせて暴力沙汰ということも…

 当然ですが、裁判所では、このような事態が起こらないように配慮がなされているようです。

 このような場合、調停申立ての際に、申立書に暴力が予想される具体的理由を記載し、さらに受付で暴力の可能性をあること、また夫に住所を知られたくないということを伝えます。そうすると、受付係から、その事件を担当する審判官等に暴力のおそれがあることや住所を知られないようにする必要があることが伝えられようです。

 それにより、審判官が暴力の予想される事件として取扱いに注意が必要と判断した場合、書記官が調停期日そのものを夫とは別にするか、また、同じ日に調停を行うにしても時間帯をずらすなどの措置をとるそうです。もちろん、夫が妻の住所を教えて欲しいと言っても教えることはありません。

 また、審判官が必要と判断すれば、第一回目の調停に家庭裁判所調査官が出席し、夫の暴力により調停で冷静な話し合いができなくなってしまうかどうかを判断するという措置をとることもあるそうです。

 このように、暴力夫による暴力のおそれがある場合、裁判所がそれを考慮して離婚調停ができるように対応してくれます。なので、暴力夫と離婚を考えている方は、暴力夫を恐れずに離婚調停を起こして、いち早く暴力夫と離婚できるようにしましょう。

弁護士 竹若暢彦