こんにちは。雨降りでいやですね。
本日は、夫婦が不動産を所有している場合の財産分与についてお話します。
一般の個人が所有する財産で、最も価値が大きい可能性があるのは、不動産です。そのせいか、財産分与の際には、不動産をどのように分与するかでもめることが多いです。
財産分与では、原則、夫婦で保有している財産が2分の1ずつ分与されます。預貯金などは、分与しやすいですね。実際に預貯金口座からお金を引き出して、2分の1ずつになるように金額を調整すればよいだけです。
これに比べ、不動産を持っているとたくさんの点で問題が生じます。
まず、不動産の価値は簡単には計れないということ。不動産を分与する場合、まさか建物を物理的に半分に割ったりすることはできませんから、不動産の価値を半分ずつ取得すると考えて、実際に不動産の所有者となる配偶者が他方の配偶者に対して、不動産の価値の半分にあたる金銭を支払うという方法をとります。
ところが、不動産の価値の査定なんていうものは、地価や立地条件、周辺の成約事例などから出すもので、個々の要素を最大に評価するか最小に評価するかで、査定結果が大きく異なってきます。この前、不動産業者にある査定をしてもらったとき、最悪の評価をしたら3900万円くらい、最高の評価をしたら5000万円くらいになることもあり得る、実際売れるのは4700万円くらいだろう、と言われました。
このように、不動産の査定というのは査定の仕方でまちまちなので、そもそも不動産の価値がいくらか、というところで双方の合意が得られないことがあります。つまり、不動産の所有権を得て他方配偶者に2分の1の価値にあたる金銭を支払う配偶者としては、なるべく低い査定の方がよく、他方の配偶者としてはなるべく高い査定の方がよいのです。
次に、査定をとってみたら残ローンの方が高額だったとき、残ローンをどう分けるか(それとも分けないか)について争いになることもあります。不動産の所有権を得る方は、他方配偶者に残ローンの一部を負担してもらいたいし、他方配偶者は、まさか自分が住むこともできない不動産のローンを支払うなんて考えられない、ということになるでしょう。
ここまでは、実際には売らない場合を前提として考えてきましたが、もちろん、実際に不動産を売却して、その売却益を分けるという方法もあります。この方法のメリットは、実際に売却代金が確定するので、不動産の価値についての論争は避けられるということです。
しかし、実際に売却するとなると、すぐに売れるわけではなく、売却まで数か月かかります。それまで離婚を引き延ばすことはできないので、まずは離婚してから売却、ということになるでしょう。しかし、いくらで売れるか、つまり、自分がいくら得られるのか不安なまま離婚することになります。売却益を期待しない場合はいいかもしれませんが、売却益でしばらく生活しようと考える人にとっては深刻な問題です。離婚時に、売却益をどのように分配するか、売却手続きはどちらが担当して、その精算はどのようにするか、など、細かく決めておかなければ、多額の売却益をめぐって再度争いとなる恐れもあります。
不動産がからむ案件は、慎重な判断が必要です。