調停というのは、お互いが譲れるところは譲り、守るところは守る、という姿勢で話合いをすることによって妥当な落とし所を探る、という紛争解決の方法なので、どちらかの当事者が相手の言い分は全て拒否して自分の言い分を100パーセント通そうとしたり、とにかく話合いなんかしたくないと言い続けたりすると、調停はまとまりません。

 調停の結果、話合いがまとまれば、調停成立ということで一応めでたく調停は終了しますが、全く話合いがまとまる気配がない場合、調停はどのような形で終了するのでしょうか。

 まず、調停が不成立となるという場合があります。調停機関は、

① 当事者間に合意が成立する見込みがない場合
② または成立した合意が相当でないと認める場合において
③ 家庭裁判所が調停に代わる審判をしないとき

は、調停が成立しないものとして、事件を終了させることができます。

 ①の場合には、調停を続ける意味がなく打ち切るしかありませんが、合意が成立する見込みがあるかどうかは、調停機関の自由な判断に任せられていますので、いくら不成立にして欲しいと希望しても、調停機関が成立の余地があると判断すれば、調停は続行されることになるでしょう。

②の場合には、基本的には、当事者が真意で調停を成立させたいと考えているのであれば、それを尊重すべきですので、調停機関は過度の介入を控えるべきであり、「不相当な合意」と認める場合は非常に限定的になると考えられます。

 調停が不成立となると、書記官は調書にその旨を記載した上、遅滞なく当事者に通知をしなければなりません。当事者が出頭した期日で不成立となれば、その場において口頭で通知されます。

 調停が不成立になった場合、なお離婚したいのであれば、離婚訴訟を提起することになります。離婚訴訟は調停前置主義がとられていますので(家事審判法18条)、離婚訴訟の訴状には、調停不成立の調書の謄本を添付します。

 もう一つの終わらせ方として、調停の取下げについても、家事審判法規上規定はないものの、一般的に認められています。取下げは、調停が終了するまではいつでも、相手方の同意なくできるものと解されています。取下げによって調停は申立時にさかのぼって効果が消滅し、調停でなされた主張や請求は全て無かったことになります。

 そうすると、調停前置主義からすると、調停を取下げた場合には調停が無かったことになるのだから、もう一度調停をしなければ離婚訴訟を提起できないように思われますが、調停の内容を実質的に見て、訴訟で争点となる点について調停が行われたと認められる場合には、取下げによる終了の後訴訟を提起しても、調停前置主義には反しないと考えられます。

弁護士 堀真知子