当事者の話し合いで離婚できない場合に、当事者の一方が離婚調停を起こしたら、当事者は必ず調停へ出頭しなければならないのでしょうか。

 これについては、家事審判規則に規定されていまして、原則として「事件の関係人は、自身出頭しなければならない。」ことになっています(家事審判規則5条1項本文)。これを「本人出頭主義」といいます。本人出頭主義がとられている理由は、以下のような点にあります。

① 本人から直接事情を聴取し、紛争の実態を的確に把握することにより、公正妥当な判断ができること
② 離婚は身分行為であり、本人の意思によらなければ、調停を成立させることができないこと
③ 代理人だけではどの程度のところで調停を成立させればよいか判断できないことも多く、本人が直接出頭することで調停成立の機会を多くすることができること

 ただし、やむを得ない事由があるときは、代理人のみの出頭でも許される場合があります(家事審判規則5条1項但書)。具体的には、本人の病気、海外出張、親族の危篤、近親者の吉凶などです。単に忙しいからという理由では、やむを得ない事由に当たらないようです。

 また、「代理人」には、弁護士ではない者も家庭裁判所の許可を得てなることができます(家事審判規則5条2項)。もっとも、この許可は、一度与えられても、調停機関が相当でないと認めれば、いつでも取り消すことができます(家事審判規則5条3項、137条)。

 このように、調停を起こしたり、起こされたりした場合、よほどのことがない限り、当事者本人が出頭する必要があります。調停は、1回当たり大体2時間くらいかかりますので、お忙しい方は、弁護士に依頼して、早期に調停を終わらすようにした方がいいと思います。

弁護士 竹若暢彦